本日10月30日は、14年ぶりに政権を奪還した労働党によるバジェット(財務大臣が今後の英国の財務方針を発表する)の日です。イギリス在住の納税者にとって多大な影響がある大事なイベントです。数週間前からイギリスのメディアではどんな増税が発表されるかと予想の記事で持ち切りでした。
イギリスは財政赤字が220億ポンドになっており、国の債務も膨張し続け、国民への負担が大きくなっています。それを補填するために400億ポンドの増税をします。弱きものの味方である労働党は主に富裕層への課税を強化すると見られてきました。予想通り、大規模な増税が発表されました。
バジェットの目玉の一つは、21歳以上の最低賃金が6.7%引き上げられ来春から時給£12.21(2,400円)になります。すごいですね~インフレになるでしょう。金利も高止まりすると予想されます。
国民年金支給額は来年度4.1%増額になります。
労働者の国民保険料、付加価値税、所得税は増額されません。その代わりに、雇用者の国民保険料の負担が13.5%から15%に増えます。2022年以降凍結されていた所得税の控除額は2028年以降インフレに合わせて引き上げられます。
投資家の私に最も影響があると思われるキャピタルゲイン税は、基本税率の人は10%から18%に、高税率の人は20%から24%に引き上げられます。住宅の売却益は税率据え置きで、それぞれ18%と24%で維持されます。繰越利益は2025年4月から32%課税されます。
様々な憶測が飛び交っていた相続税は、控除額が据え置きとなりました。タバコ税は10%増税になります。
投資用不動産の取得には、居住用に2%上乗せの印紙税がかかっていましたが、上乗せ分が5%になるそうです。これは不動産市場にとても影響が大きい変更です。これにより投資家が不動産投資市場から退出し、手が届く価格の住宅を増やすというのが政府の目論見です。
自動車のガソリン税は据え置きとなりました。
予算案は、防衛費、公立学校への補助金、科学分野への投資の増額などが発表されました。郵便局のスキャンダル被害者、汚染血液の被害者への補償はきちんと行うそうです。コロナ禍の不正を追及し、詐欺撲滅のタスクフォースを編成するそうです。想定に比べ莫大な費用がかかり、計画が頓挫していた高速鉄道HS2の建設も再開します。
イングランドのバス運賃の上限が2ポンドから3ポンドに引き上げられます。バスは遅いのに割高なので、私は今年に入ってから全く利用しなくなってしまいました。
政府はクリーンエネルギーへの投資を強化し、特に水素エネルギーのプロジェクトを推進するそうです。
英国政府が現在最も予算をつぎ込んでいるのはNHS(国民健康サービス)ですが(それにしてはお粗末すぎ)、財務相はNHSに対する予算増加を発表しました。
所感としては、全体的に保守党による予算案よりも弱者に寄り添い、国を正しい方向に導いている気がします。個人的には、投資用不動産に対するスタンプデューティの5%上乗せはショッキングなほどキツく、今後の計画が変わるかもしれません。慎重に試算して今後の方針を決めます。近々に税理士とも相談しようと思います。