住宅を購入できる給料の業界は?(英国)

英国で「住宅を購入するのに十分な平均賃金を得られる産業はない」という驚くべき調査結果が発表されました。

英国全土の産業を対象にした最近の調査によると、どの業界で働こうが、住宅を所有するのに必要な給与を満たさないということです。ONS(英国世論調査)のデータを分析したところ、フルタイム就業者の平均給与では、平均価格の不動産を購入できないということ。

住宅保険会社によると、英国で独身者が住宅を購入するのに必要な平均給与は59,307ポンド(1ポンド=194円)だそうです。つまり、日本円で1,153万円の年収が必要になります。恐ろしいのは、この水準を提供している業界はないということです。

最も近い業種は、(意外にも?)電気・ガス・蒸気・空調供給業ですが、それでも必要額に8,779ポンド届きません。 金融・保険サービス業に従事する人々は、必要給与額を11,110ポンド下回っていますが、それでも2番目に給与水準が高い業界です。次いで鉱業・採石業、情報通信業、専門的・科学的・技術的活動の順です(産業の分け方が面白いですね)。産業とその年収中央値は、電気、ガス、蒸気、空調供給業が50,528ポンド、金融・保険業 48,197ポンド、鉱業・採石業 46,978ポンド、情報通信業 44,733ポンド、専門、科学、技術活動 41,453ポンドです。円建てで考えると高給取りに思えるかもしれませんが、住宅が高額なのです。そして、英国の住宅ローン金利は今後下がるとは思われるものの、現在は5%ほどです。

住宅を所有するために必要な給与をはるかに下回っている業種は、宿泊・飲食サービス業、農業、林業、漁業、その他のサービス業の給与はいずれも3万ポンドを下回っており、必要な給与との間に大きな開きがあります。 家庭向け商品・サービス業に従事する労働者は給与水準が最も低く、この目標に到達するには給与を2倍にする必要があります。 料理人、庭師、運転手、世話人、ベビーシッター、家庭教師、秘書などの平均年収も25,000ポンド強です。ロンドンだと、フラットシェアでも生活できない水準です。

どの業界に従事してもマイホームに生涯手が届かないというショッキングな調査結果は、国民の給料上昇率に比して住宅価格上昇率が大きいことが原因です。資本主義はR>G(資産増加率>給与上昇率)ですから、人生の早めのタイミングでリスクをとり始めなかった人は、後で追いつこうにも差が広がってしまっています。政府はもちろん対応策を検討していると思われますが、すでに高額で住宅を購入した人に損をさせるわけにもいかず、住宅を買えない人への効果的な支援は期待できなさそうです。

30代の知人(英国人独身男性)は、英国で働いていては一生住宅が買えないと嘆いて、海外で駐在員ステータスで働く仕事(家賃は雇用主持ち)を見つけ、住宅購入の頭金が貯まるまで国外移住するそうです。カップルや友達同士やきょうだいで不動産を共同購入すれば資金的には楽ですが、一生懸命働いても独身だと買えないというのはおかしな話です。

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