投資家村上世彰氏の著書「生涯投資家」を読みました。興奮してかぶりつくように読み、最後は感動しました。
著者は2006年にインサイダー取引をしたとして、証券取引法違反の罪で逮捕され有罪判決を受けました。当時の騒ぎがすごかったのを覚えています。ライブドアの堀江貴文氏も逮捕されて、堀江氏は服役もしました。テレビで説明（釈明？）する様子を見ながら、ホリエモンほどではないにしても、正直なところ胡散臭いという印象でした。
本書を読んで、村上氏が当時どういう信念に基づいて何を目指していたのかが明確に理解できました。そして私も規模は違えど投資家の端くれで資本主義を強く支持しており、彼に心から共感し、投資家としてこうありたいと思いました。彼はまさに「生涯投資家」です。
元々、通産省の官僚だった村上氏。役人として出来ることに限界を感じて、辞めて通称村上ファンドを立ち上げました。一流企業の社長などから資金を集めて、儲かる投資先を探していきます。
父親が投資家だったそうで、小学3年生の時に100万円（！）を渡され、これを元手に投資を始めたそうです。スゴい家ですね。官僚時代に日本企業の資金が滞っていることを変えることで、企業価値が高まり、日本経済も活性化すると考えたそうです。村上ファンドを始めてからは、徹底してバリュー投資をし、将来価値が上がると思われるのに安いままの会社やアセットを次々と買っていきました。投資で儲けることがまだいやらしいと見下されていた時期でしたが、自分こそがプレーヤーになって世の中を変えていこうと考えていたそうです。
上場企業でありながら、投資家から資金を調達していて利益を分配するというアイデアが全くない経営者が多く、著者は投資家目線で企業がどうあるべきかを経営者たちと話し合ってきました。そして日本初のTOBをしかけ、非上場にすることで企業のオーナーになったりしました。数十年前はコーポレートガバナンスの概念が日本企業に全く浸透しておらず、総会屋にびくびくしながら株主総会を開いたり、株主が経営に口を出すことが出来ると思われていませんでした。徐々に企業は株主のために利益を出すものだという考えも認められるようになりました。
そして、株主構造がねじれていたフジサンケイグループに投資をしかけているさなかに起きた、ライブドア事件。著者は逮捕され、裁判で有罪になり執行猶予が付きました。失意のなか国外に移住し、そこから個人で投資をしながら、チャリティなどNPOにも寄付をするなどしているようです。
投資で大失敗した事例やその原因もいくつか書かれていて、興味深かったです。一貫した投資哲学で数千億円という巨額の資金を動かして増やしていくにあたり、一見強欲に見える著者は強い正義感に基づき決断しているのが分かります。
著者がコロナ後に出演したYouTubeを観たら、数年前に現在の状況を見事に予想していて、舌を巻きました。
私も、一生投資家であり続けたいです。
