イギリス政府が、不法移民をルワンダに移送するという計画があり、先週からニュースになっています。アフリカなどから大量に到着する移民が後を絶たず、欧州各国は対応に追われています。欧州の他の国も同様の対処を迫られるだろうと言われています。実際に、デンマークは2年前にルワンダ政府と交渉を始めたそうですが、未だに合意には至っていません。イギリス政府は昨年の夏から極秘に同様の交渉をルワンダ政府と始め、計画をより単純化したためにデンマークより早く合意されました。単純化されたプランというのは、不法移民たちのルワンダまでの片道フライト代を政府が負担するというものです。
軍隊がイギリス海峡の国境業務を担当するようになった最初の2日間で600人の不法移民がボートで到着しました。海の国境のセキュリティに5千万ポンドの追加費用と、パトロール用に300人の人員が投入されています。今年イギリスに到着した不法移民は、ルワンダへの移送の対象になると発表されました。遡って1月からとしたのは、合意書にサインされるまでに移民が殺到することを避けるためです。
パテル内政大臣は、「欧州や他の移民受け入れ国のお手本となる」と主張しています。欧州諸国は増え続ける不法移民に頭を抱えていることは事実で、受け入れを続けることは不可能なため、解決策を探ってはいます。ただ、EU諸国は移民政策でもある程度足並みをそろえる必要があり、その点自由なイギリスは思い切った政策に出たということです。
なぜルワンダかというと、ルワンダは経済発展のために労働人口を欲しているのだそうです。若いアフリカ人男性は大陸を出て行ってしまい、労働力不足に悩んでいるので、移民大歓迎だそうです。
当然ながら、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)など難民人権団体はこの方針に大反対をしています。現在、ウクライナからの難民が増えており、その人たちの受け入れにも影響することが懸念されています。また、反対派はこの方針が移民を減らすとは限らないと主張しています。
パテル内政相は、以前毒舌で同僚を罵倒し、いじめを受けたほうがトラウマになるなど、クビの危機がありました。今回このとてつもないディールを取り付けて来て、また別の意味で国民を唖然とさせています。一方、ボートで渡ってきた移民たちは、「アフリカに送り返されてもまた来る」と言っています。他には、オーストラリア、イスラエル、デンマークも不法移民を送り返しているようです。他国も含めた今後の成り行きを見ていこうと思います。