(前の記事から続く)
妻の父はインド第2位のIT系大企業のオーナーです。彼女は父の経営する企業の株式7億ポンド相当(1,143億円)を保有しており、その配当金収入が昨年は1,160万ポンド(2億円弱)だったそうです。非居住者の場合、イギリス国外での収入には税金がかかりません。節税効果は1年でなんと210万ポンド(3,400万円)!妻はこれ以外にも、タックスヘイブンに登記してある会社に支払われる非課税の収入があるそうです。
この告発を受けて妻は非居住者になることを断念し、イギリスに税金を納めることに合意しました。
スナク氏は妻のステータス変更は違法ではないと言い張っていますが、彼が一般人だったら許されたでしょう。実際にあらゆる手を使って節税をしているしているビリオネアはごまんといます。というか、うまいこと節税しないとビリオネアにはそもそもなれない、という皮肉な社会システムなのです。
スナク夫妻は、イギリスとアメリカに計4件の不動産物件を持っていることが公表されています。彼の選挙地盤の豪邸、一等地サウスケンジントンの5寝室の豪邸、同じくサウスケンジントンのフラット、カリフォルニアのサンタモニカビーチを見渡すペントハウスです。推定計数十ミリオンポンドです。それ以外にも、彼は政府が提供する住居を2か所利用しています。スナク氏自身も、20代半ばにマルチミリオネアの仲間入りをしていたと報道されています。
Heat or Eatと、暖房か食料かの2択を迫られている国民に増税をし、本人は文字通りケタ違いの財産を持ちながらも、国庫に納めるべき巨額の税金を逃れようとしていることに、国民の怒りは爆発しました。
彼はイギリス政界のナンバー2ということで、次期首相、しかも非白人で初めての首相になると目されていました。しかしながら今回の件でその可能性はなくなりました。国民に課す税金を決める立場の人の妻が税金逃れをしようとしていた事は利益相反とみなされます。ただ、彼を任命したジョンソン首相のサポートを得て、財務相としてのポジションは保持すると思われます。とはいえ、次期選挙で、増税をした保守党が労働党に負けることは確実視されており、そこまでですけれど。
歴代の首相もほぼ全員がもともと富裕層で、どんなに身ぎれいにしていても、公の人となる以上財産は隠しようがありません。スナク氏も、財産を守りたければ財務相にならなければ良かったのですし、首相になりたいのなら、財産を隠そうとせず、持っている資産の多くを売ってしまうくらいの勇気が必要です。
政治家キャリアに壊滅的ダメージを受けたスナク氏は、妻と大ゲンカして別居中だそうです。まぁ家はたくさんお持ちのようですから、お互い好きなところに住めばいいでしょう。
それにしても、一生かけても使い切れない資産を持っていても、税金は払いたくないものなのですね。