イギリスでは、4月から5%の頭金で不動産購入可能に

<注>最近この記事にたくさんアクセスがありますが、2021年3月時点の情報です。

先日の英国の今年度予算発表でスナク財務相が明らかにしたのは、英国政府が住宅価格の95%までを保証するので、5%の頭金を用意すれば住宅が買えるようになるという政策でした。国民の収入に対して住宅価格が上がりすぎてしまい、若い世代は1軒目の不動産の頭金が用意できません。現在は、最低10%の頭金が必要です。

政府が95%まで保証するというのはどういうことかというと、住宅価格の95%まで住宅ローンを借りた購入者がローンを払えなくなり差し押さえになった場合も、住宅ローン貸し手の銀行が政府保証を購入しておけば、政府が損失の一部を負担するということらしいです。つまり、銀行側が安心してローンを提供することができるようにすることで、購入者も買いやすくなります。この政策は、頭金5%~9%までの住宅購入に適用されます。購入者が住宅ローンを払えなくなった時に政府が肩代わりしてくれる制度ではありませんのでご注意ください。

実はこの政府保証は初めてではなく、住宅ローンを取得するのが難しくなっていた2013年にHelp To Buyの名前で導入されています。当時、制度の恩恵を受けて住宅を購入した人が10万人いたそうです。

今回の制度を利用する条件は、以下になります。①1軒目の居住用不動産であること(投資用物件は除外)②法人ではなく個人で購入すること ③住宅価格は60万ポンド以下(9,100万円以下←いきなりそんな高い物件を買う人いないでしょう)④制度適用期間内(2021年4月~2022年12月)の購入であること ⑤リペイメントタイプの住宅ローンであること(利子オンリーは除外)⑥住宅ローンの審査が適正に行われること(収入に対して無理が無い返済計画か)。また、この制度を利用する金融機関は、5年固定金利の住宅ローンを選択肢に含めなければいけないという決まりもあります。

この新制度発表後、住宅ローンのシミュレーションサイトは85%もアクセスが増えたそうです。また、不動産検索も16%アップしたようです。

今英国で売り出し中の住宅の86%は60万ポンド以下です。人生最初のマイホームの平均価格は20万ポンド(3,047万円)、この場合頭金は1万ポンド(152万円)用意すればいいのです。ロンドンの場合、最初のマイホーム平均価格は48万9千ポンド(7,400万円!)なので、平均的な不動産を買う人は25,000ポンド(371万円)の頭金が必要です。

英国で人生最初の不動産を買う平均年齢は34歳だそうです。イギリスでフルタイムで働く30~39歳の平均年収(額面)は男性が34,567ポンド(524万円)、女性が30,258ポンド(459万円)です。ちなみに、日本では初めてマイホームを購入する平均年齢は40歳で、購入時の平均世帯年収は700万円だそうです。平均住宅価格は4,000万円超、頭金は平均30%超でローンを組んでいるようです。

通常イギリスの銀行は購入者の年収の4.5倍までしか住宅ローンを貸しません。そこから逆算すると、この新制度を利用してロンドンで最初のマイホームを平均価格で買う場合、年収が103,000ポンド(1,600万円!)必要になります。カップルや友達同士で買うなら合算できますが、それでも買える人は限られてきます。

今のところ、ロイズ、サンタンデール、HSBC、バークレイズ、ナットウェストの5大都市銀行はこの制度に参加することを表明しています。

頭金5%で残り住宅ローンを組んだ場合のリスクは、将来住宅価格が下落した時に、ネガティブエクイティ(債務超過)になりやすいということです。住宅の価値以上の負債を抱えることになれば、住宅の売却も住宅ローン借り換えも難しくなります。私の知人で実際にネガティブエクイティに陥って住宅が売れなくなってしまった人がいます。そのため、頭金は多いほど安心です。

私は年齢も高いので(ローン残り年数も限られます)95%ローンは怖くて組めませんが、頭金を貯めにくい世代にはありがたい制度ですね。

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