報道によると、昨年7月に労働党政権が発足して以来、記録的な数の富裕層が英国から国外移住したそうです。私は自分にあまり関係がなかったので意識していなかったのですが、英国に居住する人は今年の4月から海外に所有する資産にも相続税が課されることが決まっていて、それに嫌気をした人々が国外に居住ステータスを移しているようなのです。
財政難を抱える英国は、新たな財源として相続税を厳しくする方針を打ち出しました。新税制に影響を受ける人々は続々と流出していて、タイムズ紙の報道によると、昨年90人のビリオネアを含む10,800人のミリオネアが国外へ居住を移したそうです。そして現在も45分に1人のミリオネアが英国を去っています。ミリオネアの流出は中国に次いで世界で2番目の規模でした。
彼らがどこへ行ったかというと、イタリアやスイスなど欧州の他国、アラブ首長国連邦などへの流出が大半を占めているとのことです。2000年代初頭までは、英国、特にロンドンは世界のミリオネアの人気の移住先の一つでした。ミリオネアの多くが英語を第1もしくは第2言語とするとういう背景がありましたが、今はその人たちも米国やオーストラリアなどを選ぶようになりました。
ミリオネアやビリオネアが国外に行くということは、最大の税収源がなくなるということですので、英国政府を批判する声も高まっています。もともと革新派である労働党は、経済的に恵まれている人が社会の基盤安定に多く負担をすることは公平だという考えをいまのところ堅持しているようです。
昨今の株式市場や暗号資産の上昇で次々にミリオネアが生まれています。こういう新しいミリオネアにはテクノロジー分野で成功した若い起業家なども入っていて、彼らは米国やアジアなどで活躍すべく英国を後にしているようです。さらに、英国の公共サービス、特に医療の悪化が国外流出の要因だとする分析もあります。
また、キャピタルゲイン税や不動産関連の税率が他国と比べ見劣りすることも、国外転出の決め手の一つになっています。
相続税とは無関係でミリオネアの末席にいる我が家も、数年以内の国外への移転を検討して調査を進めています。税制とは別の理由ではありますが。