次々と移民が押し寄せてきて欧州の国々は困り果てています。英国では、難民をルワンダに強制送還する制度が出来たことは以前の記事で書きました。
アイルランドに英国(の北アイルランド)から強制送還させられるのを恐れた移民が続々と入国してきており、同国は英国の移民政策を非難しています。それに対し英国はアイルランドからの移民の再度受け入れを拒否している状況ですが、50人の移民がアイルランドから英国に送り返されたことが明らかになり、今度は英国内で怒りが巻き起こりました。
アイルランドに入国する不法移民の80%以上は英国から来ているとアイルランド側が主張しますが、スナク首相は同国との移民帰還協定の検討を拒否しました。
さらに、難民申請を却下された人もルワンダに送られる可能性があることを英国内務省が発表しました。強制送還される人たちは、国籍を問わずルワンダでの居住権が認められ、5年間の支援パッケージを受けることになります。シリアやアフガニスタンなど危険な母国に送れない人たちがこの強制退去の対象となっているようです。
スナク首相は、ルワンダ政策の目的は小型船の到着を阻止することであると繰り返し主張しています。
アイルランドの移民制度はパンク寸前で、国民の怒りは英国のルワンダ強制送還計画に向けられています。昨年のアイルランドへの移民申請者数はパンデミック前の水準と比べてほぼ3倍に増加しました。英国はルワンダだけでなく他の東アフリカの国に強制送還できる法案を先週議会で可決しており、これを受けてここ数週間で英国北アイルランドから隣国アイルランド共和国に渡る移民が激増しているのです。難民たちは小さな村のホテルに収容されるため、観光客が全く訪れなくなってしまったと地元の人は嘆いています。難民一人を保護する年間コストは約43,000ポンドと報道されています(エクスプレス紙)。もちろんアイルランド政府が費用は負担しますが、地元民の怒りはアイルランド政府にも向けられます。
英国やアイルランドだけでなく、ドイツやフランスも抱えきれない移民・難民問題に悲鳴を上げている状況です。小さいゴムボートにギュウギュウ詰め、命がけでしがみついて海峡を渡ってくる人たち。生まれ国ガチャに不運にも外れてしまった人の人権は誰がサポートすべきなのか、元から住んでいる人たちの暮らしをどう守っていくのか、とても難しい問題です。