来年の英国国家予算(Budget)発表

今日、日本でいう財務大臣にあたるハント氏が、国会で施政方針演説をしました。基本的に毎年1回この時期に行われるもので、来年度以降の税制や社会保障制度の変更が発表されるので、イギリスに住む人にとっては大注目のイベントです。

今年は各種減税が発表されるのではないかという期待・噂で持ち切りでした。さて、結果は?

一般の納税者に最も影響が大きいと思われる変更は、国民保険料(NI)の減額でした。現在、企業に勤める人は額面の12%を国民保険料の名目で天引きされています。これが来年1月6日から10%に引き下げられるとのこと。現在、年収が£12,571~£50,271の人は12%、それ以上の人には超過分に2%課税されています。この国民保険料は、国民年金や国民健康サービスの財源になっています。日本でいうところの国民健康保険と国民年金保険料を合わせたようなものです。

他には、国民年金の給付金が2024年4月から8.5%(!)増額され、週当たり221.20ポンドとなることも発表されました。太っ腹…。それ以外にも、ユニバーサルクレジット(日本でいう生活保護)、障害給付金(障害者年金)は今年9月のインフレ率を反映し、6.7%増加するそうです。

また、失業後18か月経っても仕事を探さない生活保護受給者は、強制的に職業紹介を受けることになります。

英国の最低賃金は時給10.42ポンドから11.44ポンドに上昇します。

タバコ税は10%の引き上げ、アルコール税は来年8月1日までは据え置きです。

さらに、経済成長を促進すべく、企業がIT、機械、設備への投資により法人税を節約できる減税措置を恒久化することが発表されました。恒久化といっても、来年か再来年に政権が労働党に変わったらもちろん撤廃される可能性は高いですが。

英国の経済成長はかろうじてプラスになることが見込まれるものの、ほぼ横ばいのレベル、つまり鈍化すると予想されています。英国政府による来年のGDP成長率は0.7%ということでした。この予測により、金利はこの先数年間にわたり高止まりすることが予想されます。債務を抱える家計は当面利払いの負担が重い状態が続くでしょう。

ずっと噂になっていた相続税の減税は、裕福な人をさらに裕福にするだけという批判をかわすためか、出てきませんでした。総選挙に向けて、生活に苦しむ貧困層や年金受給者への負担軽減を前面に出した政策ですが、昨年のトラス前首相の意味不明なミニ・バジェットに比べるとはるかに現実的でまともなな印象なので、国民に支持されやすいと思います。さて、保守党は政権に残れるでしょうか?残念ながら、難しいでしょうね。

この減税分や社会福祉費増加分の財源は本日のバジェットでは明言されませんでした。国債残高を減らしていくという方針ですので、経済成長による法人税や所得税増加を期待しているのだと考えます。

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました