年間通してあらゆるジャンルの本を読みます。今年もたくさんのいい本に出会うことができました。
一時帰国した時に数十冊まとめ買いして来ます。とはいえ持って帰る重量の制限もありますし、最近は動画に頼りがちで、読書のスピードは減ってきています。
本を選ぶときには、初版からある程度時間が経って、評価が見えるものにしています。人から借りることもあります。以前はロンドンに日系の本屋がいくつかあったのですが、すべて閉店してしまいました。
<1位> 2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ
2020年出版時点で2030年に予想される世の中を書いた本。コロナ禍直前のタイミングだったが、2025年の現在はパンデミックさえもちょっとしたノイズ程度で、世界の進歩は止まらない。ちょうど半分来たところで、予想通りになっているか答え合わせをしながら読んだ。キーワードはエクスポネンシャル(高校の数学で習ったe、指数関数的な伸び)と、コンバージェンス(統合、主にAI関連)である。特に感銘を受けたのは、3Dプリンターで人間の臓器まで作成できることや、あと12年でエイジング巻き戻しが老化スピードに追い付くこと、ドローンを利用した植樹などである。最新技術が医療、食べもの、環境、交通、教育などあらゆる分野でどう活用できるのか、が説明されていて、世の中は今こうなっているのか!ボケっとしていられないな、と思った。
<2位> 国宝(上・下)
映画が話題になったらしいが、原作の小説を借りられたので読んでみた。ちょっと極端な設定ではあったが、九州のの極道の家に生まれた青年が関西で歌舞伎の女形として訓練を受けて成長していく様子が描かれていて、非常に面白かった。一時帰国の際に歌舞伎を数十年ぶりに観たくなったが、これが話題になってしばらくチケットが取りにくいかもしれない。
<3位> バルセロナで豆腐屋になった
出版社や新聞社で記者をしていた著者が取材で訪れたバルセロナに魅了され、定年後に移住を決める。そこで自分が何をできるかを考え、現地で豆腐屋になることに決めた。全く違う分野の仕事のトレーニングを積み、土地勘が無い街で慣れない商売をしつつ、弁当にまでビジネスを拡大していく。定年後の人生について考えることが増えたが、著者のバイタリティと実行力に頭が下がる思いだ。
<4位> 美しき愚か者たちのタブロー
原田マハさんの本はたくさん読んできたが、今年読んだ中でも「さいはての彼女」と本書はとくに良かった。この本は、昭和初期に父親の造船業のおかげで財に恵まれていた松方幸次郎(川崎汽船、のちに政治家)が、日本に戦後必要なのは世界の文化だと考えて欧州で絵画や美術品を多数購入し、日本に西洋美術館を建設するというストーリー。リサーチを重ねて書かれており、実話をもとにしている。パリやロンドンの画廊や、購入した絵画をどう守って取り返したか、などのドラマが非常に興味深かった。
<5位> カフネ
国家公務員として働くが、離婚して人生の目的を見失いかけたアラフォーの主人公。弟が急逝してしまい、その遺言にあった元彼女に会いに行く。彼女は家事代行を生業としていた、という話。中年の危機、というか妙に共感できたので5位。
<次点> BUTTER
実際にあった保険金殺人事件を題材に書かれ、イギリスで複数の文学賞に選ばれるなど話題になった。読んでみたら面白かった。殺人の罪で服役する被告と面接を重ねて動機や背景を探ろうとするジャーナリストが主人公である。調べるうちに被告の独特の世界に引き込まれていくのだ。5位のカフネもそうだが、食べものの描写が良いと印象に残る。
今年読んだ本の中から選びました。さかなくんの「一魚一会」も良かったです…こう書いていくときりがないですね。

