イギリスで介護殺人が少ない理由を考察

日本のニュースサイトを見ていると、介護疲れからの殺人や自殺が増えているのを感じます。家族を見捨てるわけにもいかず、自分の人生を何年も犠牲にしているのに、介護を受ける人から感謝をされないどころか、暴言や暴力の被害を受けたりすることもあるそうです。絶望して手をかけてしまう人がいるのですね。

イギリスでは同様の事件はほとんど聞いたことがなく、なぜなのか考えてみました。以下は私の推察です。

義両親を見送って感じたのは、イギリスでは高齢者に不必要な延命治療を行わないということです。もちろん救えそうな命は救おうとはしてくれますが、長期入院している高齢者が日本に比べて少ないと感じます。

また、日本のほうが高齢者が長生きする(させられる?)ようです。イギリスは75歳まで生きれば御の字、といった雰囲気があります。70代で亡くなる人も多いために、認知症が少なく感じるのかもしれません。急病で亡くなった人の家族は、「長く苦しまなくてよかった」と言います。

さらに、自宅で家族が介護をすることはありますが、仕事を辞めてフルタイムのケアラーになるケースは日本に比べてとても少ないです。主に、プロの訪問介護士に任せているようです。

元同僚のS(イギリス人男性)は、高齢出産で生まれた一人っ子です。母は先に亡くなり、90代の父は電車で2時間ほどの村で一人暮らしをしていて介護が必要になりました。Sは仕事の合間に介護に通っていましたが有給を使い切ってしまい、パートタイム勤務も検討したものの結局、50歳を前に退職しました。ほどなく父は亡くなり、父が遺した家に引越し、自分が所有し住んでいたアパートを賃貸に出しその家賃でひなびた村に暮らしています。現在56歳という年齢を考えるとまた働けばいいと思うのですけれど、働かなくても暮らしていかれるので村でボランティアをしながらのんびり暮らしていくのだそうです。私がイギリスで直接聞いた唯一の介護離職のケースです。

他のイギリス人の知人の父は80代で認知症になり、老人ホームに入所し数か月で亡くなりました。同居の奥さんはいましたが、自宅でおむつを替えるなどという発想はなさそうでした。私の義両親も内心、将来は子どもたちに同居して欲しいと考えていたかもしれませんが、入浴や排せつのサポート自体は介護士にしてもらうつもりだったと思います。

私が個人的に見聞きした限りでは、自宅で自分で介護をしたという体験談はほとんどありません。国のシステム的に、高齢者が亡くなるのは寿命で、お金のかかる積極的な治療をしないという方針の気がします。高齢者介護のために働き盛りの人が人生を犠牲にすべきではないという考えもあると思いますし、高齢者側も子どもが介護するのが当たり前という考えが無さそうなので、施設に入る必要があればそうするのでしょう。

日本の事件を聞くたびに胸が痛みます。イギリスのように割り切ることが出来れば介護をする人への負担が減りそうですが、なかなかそうもいかないのでしょうね。

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