4%取崩しルール無視する年金受給者急増(英)

老後の貯蓄取り崩しは4%ルールが常識と言っていいほど、ここ英国でも浸透しています。引退時点の積み立て年金や貯蓄から年間4%の割合で取り崩せば、死ぬまで資産が枯渇しないという理論です。

このブログで頻繁に書いていますが、英国は財政危機に瀕していて、財務相のリーブス氏はあらゆる手段で国民から税金を巻き上げようと必死です。2027年以降は積み立てた個人年金も相続税の対象になることが決まり、去年の発表以降、年金受給者の引き出し額が急増しているのです。最近のFCA(英国の金融庁のようなもの)の調査結果によると、推奨される4%の2倍の8%になっています。税金に取られるくらいなら使い切ってしまおう、ということです。年金積立をしている人のほぼ半数が、2024/2025税務年度に8%以上引き出したということですから驚きです。尚、積立金額が少ない人のほうがより多く引き出したようです。

巨額を年金基金に残したまま亡くなるとどうなるかというと、非課税額を超えた分に対して40%(!)の相続税が課されます。国民は税金の支払いはなるべく少なくしたいと考えます。

もちろん、年金基金以外に資産があって、老後資金のあてがあれば多く引き出しても問題ないでしょう。そもそも、個人年金に十分貯めることができる人は金融リテラシーも比較的高く、計画的な人が多いと思われます。そうでない人がなけなしの貯蓄を使い切ってしまうのは心配ですね。

ところが、昨今絶好調の資本市場。4%ルールはもう時代遅れなのではないか、6%が妥当なのではないかという意見も出始めています。FCAですら「6%でいけるかも?」と言い出してます。実際に、資産運用会社フィデリティ(私もここで一部運用)の試算によると、4%ルールで取り崩しても元本は引退時より増えた資産になってます。まぁ株式市場全体の平均リターンは過去10年くらいは4%を軽く超えてますからね、これが続くならそうなりますね。

英国では2015年に年金自由化が導入され、年金を世代間の富の移転手段として活用する人も出てきました。残った年金基金には相続税がかからず、75歳未満で死亡した場合は所得税も免除されるのです。2027年4月以降はこれができなくなります。年金を含む総資産の非課税限度額が現在は32万5000ポンド(6,600万円)で、これを超過したら相続税が課されます。制度が変わる前に生活費として使ったり、生前贈与を選ぶ人が増えたと予想できます。

このデータだけで結論付けるわけにはいきませんが、昨年から相続税改革が話題になっていることは確かです。私は相続する人が夫しかいないのであまり関心をもっていませんでした。相続税がかかるほどに年金を貯めている人は少数派だと思いますが、不動産やその他金融資産などを合わせると非課税枠を超える人は多くなるでしょう。引き出しすぎたものの生活資金が足りなくなって生活保護に頼るという老人が増えそうな予感があります。

AI作成の年金生活者の画像は健康で裕福そう

私は心配性なので4%ルールを厳守しつつ、つつましく生活しようと思います。おそらくほとんど使いきれずに、多額の税金を英国政府に納めることになるでしょう。

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