一時帰国時に友人と会い、新築戸建をフルローン(ペアローン)で購入したという話を聞きました。なかなかの度胸だな~と思いながら話をよくよく聞いてみると、30年住宅ローン金利がなんと0.3%とのこと!イギリスに住んでいると驚異的に安く感じます。イギリスの2年および5年固定金利は今週再び5%を超える見通しです。
一度下がりかけたローン金利の上昇が見込まれる原因は、財務相リーヴス氏の緊縮財政および増税政策にあります。リーヴス氏は重要な職に任命され、やりたい政策がたくさんあって張り切っているのだと思いますが、それらを遂行するにあたり多額の資金が必要になります。結果として、先日報道されたのが、英国の借入コスト(10年ギルト債の金利)が過去27年で最高水準に達したというニュースです。欧州の他国同様、英国経済が停滞するという懸念が高まっています。今年の国家予算は英国経済が2%成長するとの予測に基づいて立てられました。ところが、景気の不透明感から実際には0.9%くらいになりそうというのが専門家による直近の予想です。
米国でも長期金利が上昇していますが、好景気で利下げが遠のくという観測による高金利です。一方英国の場合は長期財政見通しの懸念によるもので、同じ現象でも背景が全く異なります。
借入コスト上昇のニュースを受けて、英国の市場は先週後半荒れました。英ポンドも対ドルで14か月ぶりの安値になっています。リーヴス財務相は緊急対応すべき国内問題を放置して中国への出張を強行したと批判されています。彼女は一応、必要があればさらなる財政支出削減をし、その分税金や借入を減らすことを表明してはいます。
2022年のトラス首相による失策の悪夢を思い出させる、という人も多いですが、個人的にはそこまでひどくはないと思います。
現在英国の政策金利は4.75%で、市場は年内に2回の利下げがあると予想しています。とはいえ、リーヴス氏は市場の混乱を鎮めるために対応すると発表だけでもしないと、政府に対する不信がさらに高まりそうです。