今日のBBCの記事によりますと、過去3年に英国で販売された住宅ローン100万件のうち4割は、定年退職後まで返済が続くプランのものだったそうです。金利が高止まりしているので、住宅購入者の選択肢が限定されています。
ウルトラロングと呼ばれるこの超長期ローンは、コスト分散により月々の返済額は減りますが、トータルで支払う金額がずっと大きくなることが忘れられがちです。現在イギリスの住宅ローンは5%以上という水準ですので、ネガティブな複利パワーで老後資金への影響は甚大です。
英国の中央銀行イングランド銀行によると、10件中3件の住宅ローンは年金生活になっても支払いが続いているそうです(2021年末時点)。その後金利が上昇したので、超長期ローンを利用する人が増えました。定年退職時に残債がある人は自分でためた年金基金から引き出して返済に充てるため、老後資金が大幅に減ってしまうことがあります。
初めて住宅を購入する人の平均年齢は上昇し、現在34歳です。若い人の場合は、将来年収が上がれば繰り上げ返済をして期間を短縮することもできますし、金利が下がれば借り換えもできます。引越してローンを組みなおすこともできますので、当初35年ローンを組んでも実際には定年までに返済する人が多いようです。
とはいえ、貸し手の立場からすれば、退職後支払い続ける能力が証明されなければローンを承認するのは難しいでしょう。
ロンドンでは賃貸が3分の1ほどだそうです(思ったより少なくて驚きました)。退職年齢に持ち家がなく賃貸を続ける人は11%というデータがありますが、知人の63歳自営業独身男性は生涯賃貸ですし、隣人は75歳くらいの一人暮らしの男性が賃貸で住んでいます。
定年退職の年齢になっても働き続けることが前提のローンを組んだ人が、私の友人にも何人かいます。日本の国家公務員の知人は50歳くらいで都内にマンションを購入し、月の手取りの半分以上をローン返済に充てても返済し終わるのは75歳だそうです。イギリス在住の日本人の友人は50代前半で住宅ローンを組んで、仕事をクビになったらどうしよう、と心配しています。70代でローンが返済できる収入が得られる健康状態である保証はありませんので、私ならそういう精神的にキツいオプションは選ばないと思います。なるべく若いうちに無理をしないローンを組むのが、老後苦労しないために重要だと思います。私は身の丈にあった物件を購入し、40代半ばで住宅ローンは完済しましたが、その後更年期で健康状態が不安定になったので、仕事を辞めるオプションがあったというのは精神的に本当に良かったと思っています。