安楽死合法化に向けた議論(英国)

安楽死(自殺ほう助、尊厳死とも呼ばれます)を合法化する法改正案が先月国会に提出され、今月29日に投票が行われます。イギリスでは9年前に安楽死合法化の議論があり、その時は反対多数で法案は330対118で否決されました。

労働党の国会議員リードビーター氏が国会に法案を提出したのは、最愛の実母が苦しんで亡くなるのを看取った経験からだそうです。彼女の母は我慢できない痛みに襲われ、食べられなくなり、死なせてほしいと哀願しつつ餓死したそうです。死にたいと切望する人を生かしておくことは人道的なのか、とても残酷なことなのではないか、と彼女は問いかけます。

英国では毎年650人の末期患者が、耐え難い屈辱的な死から逃れるべく自ら命を絶っているそうです。人生を終えるタイミングは自分で決めることができるべき、というのが推進派の主張です。

合法化された場合も、自殺ほう助が認められるには厳しい条件があります。判断力があり、余命6か月未満の末期的な成人だけが選択することができます。さらに、2人の医師が7日間隔で、その人が適格でありプレッシャーを受けていない状態で決断したことを確認し、裁判官がその医師の1人と話をすることが必要です。他人に安楽死の圧力をかけたり、強要した場合は犯罪とみなされ、14年以下の懲役になります。

キリスト教では自殺は罪という考えなので、反対派の勢力もすごいです。カトリック司教団は、「愛する人がもがき苦しんでいる時でも、その人の自然な終わりまで寄り添うべき」という意見を出しています。そもそも余命を予測することなどできない、と主張しています。また、彼らが反対する理由は、自殺ほう助が適用される条件が守られず、精神疾患を持つ人や末期診断を受けていない人も実際に含まれることを懸念するからだそうです。自分が存在し続けることが他人にとって重荷であると感じ、自殺ほう助を迫られる高齢者、病弱な人、障碍者も出てくる可能性があります。

現在、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ベルギー、アメリカのいくつかの州では、一定の状況下で自殺ほう助が合法化されています。スイスでは1942年(!)から、オランダでは2002年から合法化されています。

私の義母は難病になり、余命は5年と診断されました。徐々に体の機能が衰えて絶望し、海外での安楽死を希望してパスポートを作りましたが、余命診断より長く生きて数年前に亡くなりました。回復の見込みがなく、会うたびに弱っていく姿を見るのは忍びなかったです。

自分が死にたいほど痛い・苦しい状態になりそれが何年も続くなら、そういう選択肢があればいいなとは思います。法案が可決されるか、興味深く見守っています。

タイトルとURLをコピーしました