移民が次々と来て英国経済の活性化に貢献してくれるのはありがたいですが、増加する人口に仕事や福祉を供給するのには当然コストもかかります。予算責任局は、高齢化による医療費と年金費用の増加は、支出を抑制するか税金を引き上げる真剣かつ持続的な努力なしには、政府の借金と負債が急増する恐れがあると警告しています。BBCによると、労働党政府は法律を変更して政府債務の上限を引き上げる計画のようです。政府の移民諮問委員会のブライアン・ベル委員長は、今後数十年のうちに、移民を誘致するための国家間の競争が本格化すると予想しています。ポルトガルの場合、若者の多くを他国に奪われているため、現在の若者を維持することと、外国から人を呼び寄せることを組み合わせているのです。スコットランド政府はすでに、人口減少を食い止めるために移民を増やすことを支持しています(英国に来る移民の多くはイングランドに住むことを選びます)。
この変化はヨーロッパの他の地域でもすでに見られるようです。イタリアで移民に対する強硬路線を掲げる極右のメローニ首相が選ばれたのは記憶に新しいですが、彼女は合法的な移民政策を大幅に自由化しました。長寿国イタリアはすでにかなり切実な人口学的窮地に陥っています。政策でどんなに子育て支援を打ち出したところで高齢化自体を止めることはできず、熟練した人材や流動性の高い人材に来てもらうしか生き残る方法がありません。デジタルノマドをリスボンに呼び込もうとしたポルトガルの試みが功を奏したのは間違いありません。
どの国も人口統計学的に明らかな理由から、より若く、より優秀な人材を惹きつけようとしますが、税金を納めてくれる移民もいずれは年老いてその国の福祉の世話になります。とはいえ、働いてくれる人が居なければ社会は成り立ちません。待ったなしの国は日本だけではないのです。
私が20代で移民を決意したのは、就職氷河期で日本で就職先が見つからなかったという消極的な理由からですが、言語や労働ビザの壁で移住先はほんの数か国からしか選べませんでした。能力のある若者は住む場所の選択肢が増えていて、素晴らしいことだと思います。そして、移住先として魅力がない国は人材獲得競争に勝てずに衰退の一途を辿ることが目に見えていますね。