世界中で争奪戦、移住を選ぶ英国の若者 3

ロンドンを含むイングランド南東部の住宅価格は、国際的に見ても異常に高いです。イギリスの生活費は、他のG7経済圏に比べて急上昇し、長期にわたって維持されて住民は生活苦に喘いでいます。賃金と住宅価格の比率を見ると、イギリス国外の方がずっと費用対効果の高い暮らしができるのは明らかです。オーストラリアは手に職があるイギリス人労働者の受け入れを熱望しており、例えば大工やその他の建築業を優先職業とするよう規則を変更し、申請当日にビザが下りるそうです。ルクセンブルクも無料のインターナショナルスクールや公共交通機関があり、託児所には補助金が出るなど、移民誘致政策を打ち出しています。

英国からの人材の流出はすでに始まっています。優秀な英国人学生は、オックスブリッジよりもアメリカのアイビーリーグへの進学を選ぶことも多いようです。英国の大学の授業料は英国人よりも留学生の方が高く設定されていますが、ポンド高にもかかわらず年々留学生比率が高まっています。アメリカの大学は様々な奨学金をオファーしていて、シカゴ大学、ニューヨーク大学、コロンビア大学、南カリフォルニア大学は、イギリス人に最も人気のあるアメリカの大学です(私が在籍していた頃はイギリス人留学生はほとんどいませんでした)。多くの学生は卒業後もイギリスに戻ることを選ばないようで、すでに必要なスキルを持った卒業生の採用に苦労している英国企業にとって差し迫った問題です。

このような状況にもかかわらず、英国は人口動態の危機に関して最悪の状況にある国とは言い難いのです。国連の予測によれば、15歳から64歳までの人口は、今世紀中に激減するどころか、ほぼ安定するといいます。労働人口は、現在の約4400万人から2030年代には4500万人以上に増加し、その後数十年間はその水準を維持し、2100年までに4100万人に戻るだけです。イギリスを去る人たちと入れ替えに毎年何十万人もの移民が来るからです。昨年は死亡者数が出生者数を上回ったため、2023年には50年以上ぶりに移民で人口が増加しました。

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