イギリス新政権は財政赤字の穴埋めをどこから捻出するか、あらゆる可能性を探っています。キャピタルゲイン税の改正とエネルギー効率の法令順守に関して、先行きに不安を感じる家主は不動産物件を売ろうとしているとイブニングスタンダード紙の記事にありました。現在ロンドンで売りに出されている物件の2割は元賃貸物件だそうです。物件数としては、過去5年で3倍以上になっています。
もちろん、住宅ローンの金利が上昇し投資妙味が薄れたことが、住宅市場に売り物件が増えた一番の要因ではあります。ただ、それ以外にも不動産所有者は、キャピタルゲイン税の引き上げやエネルギー効率化の遵守要求に対する懸念を強めています。数年前までは不動産を購入して賃貸に出すという投資はいいリターンが期待できました。ところが昨今は株式など他のアセットクラスに投資したほうが期待収益率も高く手間暇もかからないので、不動産部門からエグジットする投資家が増えてきました。
今秋の財務相による施政方針演説で、おそらくキャピタルゲイン税の引き上げが発表されるでしょう。今財務年度は、資産を売却した際の利益に対して、3,000ポンドの控除ののち所得に応じて18%から24%課税されます。この税率が所得税と同じ、つまり20~45%に引き上げられるのではないかと投資家たちは恐れているのです。さらに、物件のエネルギー効率基準EPCを2030年までにCに引き上げないと賃貸に出せなくなり、そのためには二重窓にしたり壁や屋根に断熱材を入れるなど費用が掛かる改築が必要です。
こういった事情から、不動産投資はリスクに見合ったリターンが無いと考えられて、撤退する投資家が続出しているのです。賃貸物件不足が指摘されており、現在平均2,399ポンドのロンドンの賃料の上昇に拍車をかけています。物件の買い手がいれば、新しいオーナーが住むか賃貸に出すか、いずれにしろそこに誰かが住むわけですけれどね。
税制によって、その国の投資家のポートフォリオは全く違ったものになりますね。