日本で1980年代にあった薬害エイズ事件と酷似した問題が現在英国で大スキャンダルとなっています。
思い出すのも腹立たしい日本の薬害エイズ事件は、すでに裁判が結審し、被害者への補償が行われています。
今回調査で明るみになったのは、イギリスの国民健康サービス(NHS)で1970年代から1990年代にかけてNHSの治療を受けている間に3万人がC型肝炎やHIVに感染し、その後3000人が死亡したことです。被害者は何度も訴えてきましたが、その都度不都合な事実は隠蔽されてきたと発表されました。
今になってやっと英国政府はNHSが輸血前に血液に問題が無いか検査することを怠ったことを認め、被害者に謝罪をし、生存している被害者に21万ポンドの補償金を90日以内に支払うことを約束しました。
イギリスでは1986年までアメリカの囚人や麻薬常習者などリスクが高い提供者集団からの血液を受け入れていました。また、非加熱の血液製剤に感染の危険があることが分かったのは1982年でしたが、加熱されるようになったのは1985年末からでした。政府は、直接感染した人だけでなく、パートナーや子どもなど影響を受けた人にも補償金が支払われる方針です。被害者が死亡している場合も、家族への遺産として支払われます。
アメリカから輸入した非加熱血液製剤の使用が問題になったのは日本だけではなく、過去にフランスでも政治家や製薬会社が過失責任で有罪判決を受けています(フランスでの被害はさらに甚大だったそうです)。日本では最高裁でミドリ十字の役員3人と当時の厚生省官僚に業務上過失致死罪が言い渡されました。フィンランドやスペインでも同様のことがあったようです。当時はエイズの治療法が確立されておらず世界中で何千人もの血友病患者が感染により亡くなりましたし、HIV感染者への差別にも苦しんだと報じられています。
英国政府は2022年に、一時金として生存中の被害者や家族を失った人に10万ポンドを支払っています。今回の動きはその続きで、より詳細な調査の結果によるものです。日本で補償金支払いが決まったのは1996年でしたが、そこから20年以上経ってやっと英国政府が過失を認めるに至りました。被害者の人たちの長年の苦しみを考えると、十分な補償金を支払って欲しいと願うばかりです。