このブログで何度か書きましたが、病気を理由に働かない(働けない)英国人が増えすぎて、国の財政を圧迫しています。英国の就労年齢で仕事をしておらず、国の福利厚生に頼る人は年々増加の一途を辿っており、280万人に上ります。理由の一つに、医師の診断書(Sick Note)が比較的簡単に発行してもらえるので、それを利用して働けるのに働かない人がいるのです。私の勤務先には無期限病欠中の同僚がいますし、夫の会社にも、知人の会社にも、挙げればきりがないほどいるようです。
スナク首相は、福祉制度を改革することは道徳的使命だとし、経済的に不活発な若者を何とかすべく取り組む方針を打ち出しました。病欠の給付を12か月受けた後仕事に復帰しない人には給付を打ち切ると発表しましたが、各方面から非難の嵐でした。実際に、疾病休暇の人への手当ては年間690億ポンド(8兆円)に膨れ上がり、これは国が学校教育に使う費用を上回っているのです。
スナク首相が出した代替案は、現在180万人いる精神病患者への給付金を取りやめて治療費を負担するというもの。さらに、GP(かかりつけ医)の診断書を発行する権利をはく奪し、専門家にゆだねるという計画も出しました。現在は仮病で給付金を受けていることがばれてもお咎めなしですが、今後は刑罰の対象になります。総選挙後の計画では、健康で働けるのに仕事のオファーを受けずに失業手当をもらおうとする人は手当てが打ち切られます。
NHS(国民健康サービス)のデータによると、年間発行される診断書は1,100万通で、そのうちの94%が「この患者は就労に適さない」という内容なのだそうです。
政府のこの改革案に対して各種慈善団体や労働党が真っ向から「働きたいのに働けない人をさらに貧困に追いやる政策だ」「病気の人が怠け者のように扱われている」と非難しています。難しい問題ですが、制度を悪用する人が後を絶たないのも事実です。雇用主は医師による診断書で就労に適さないという判断があれば、その従業員を解雇することもできませんし、無条件に受け入れて給料を満額払い続けなければなりません。
日本の会社に働いている人に聞いたら、日本では長期病欠の場合給与は6割に減らされるのだそうですが、私の勤め先は5年間満額支払われます。被雇用者が安心して働けて、働くモチベーションを保つ福祉はどの程度の水準がいいのでしょうね。