英国郵便局の冤罪でっちあげ事件

1年ほど前に英国の郵便局が長年隠し続けてきたスキャンダルが報道されました。スキャンダルというと響きが軽いですが、とんでもない事件で、ここに書くのも胸が痛むような犯罪です。

富士通の開発した経理システム、「ホライズン」が郵便局に利用され始めたのは1999年です。このシステムには根本的なエラーがあり、出入金の帳尻が合わないということが頻繁に起こりました。システムが導入された1999年から2015年までの間に、郵便局のお金を盗んだという理由で起訴された郵便局員が、なんと700人に上りました。

これらの人のうち、冤罪に苦しみ自殺した人は4人、疑惑が晴れるのを待っている間に亡くなってしまった人は33人です。起訴された人は家を手放さざるを得なくなったり、破産したり、家族関係が破綻したり、悲惨な人生を送ったと報じられています。

ある郵便局員はシステムがおかしいことに気づき、何度も問い合わせをしたようですが、損失は膨らみ、巨額の返済を命じられました。郵便局はこの局員を提訴し、敗訴後局員は32万ポンドを超える高額な訴訟費用を請求され、破産しました。犯罪者として地元の新聞に写真が載るとその町に住めなくなりました。

後の調査で分かったことですが、郵便局のマネジメントはシステムに問題があったことを知りつつ郵便局員たちを責めていたのだそうです。それだけでなく、大英帝国勲章をしれっと受け取ったりしていました(これは批判を受けて返還)。

さらに、当時の取締役たちは巨額の年収・ボーナスを得ていたことが報道されています。この事件に責任がある3人の取締役たちは、2012年までに合計1280万ポンド(今の為替で24億円)のボーナスを得ていました。この金額は、平均的な労働者の給与や、いまだ補償を待っている郵便局長の給与に比べると桁違いです。一部の取締役はボーナスの一部を渋々辞退しましたが、それ以外の人はもらいっぱなしです。700人もの局員が起訴されるのはどう考えても異常で、冤罪のでっちあげは組織的犯罪であり、ボーナスを数万ポンド返還する程度で許されるべきではありません。勲章を返還してどや顔している元トップたちを背任で逮捕すべきだと思います。

当然ながら当システムを納入した富士通にも批判が集まっており、富士通側は謝罪し補償をすると申し出ています。英国政府も損害賠償を約束しています。現時点で起訴された700人以上の冤罪被害者のうち補償を受けられたのはたったの37人です。

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