<英国>国民年金の男女差撤廃運動

英国で国民年金の男女差別の撤廃を求めるキャンペーンが繰り広げられています。Women Against State Pension Inequality (WASPI)と呼ばれるグループが運動の主体となり、政府に補償を求める署名活動を展開しています。そもそも何が不公平で、彼女たちの言い分は何なのでしょうか。

英国の国民年金が全員に支給されるようになったのは1948年。当時、男性の受給開始年齢は65歳、女性は60歳でした。その後、より多くの女性が働き始め平均寿命も延びたので、男女平等のために女性の退職年齢を男性と同じにすべきという主張が増えました。そして1995年に、当時の首相メージャー氏が年金改革を行い、国民年金の受給資格年齢が2010年から2020年までの10年間で段階的に引き上げられることが決まりました。

ところが2011年に新しい年金法が導入され、女性の年金受給年齢を65歳に引き上げるのが2年短縮され、さらに全員の年金受給年齢を2020年までに66歳に引き上げることが決まりました。これにより影響を受ける1950年代生まれの女性は反発をしました。彼女たちは1995年にこの変更を通知されなかったと主張しており、法案可決から14年経って初めて知った女性もいるそうです。60歳で退職する予定だったのに直前で知った、教えてもらえなかったと不満を述べています。

2015年にこの状況に影響を受けた女性たちのグループが、国民年金不平等に反対する団体、WASPIを立ち上げました。彼女たちは、退職後の計画を立てる時間が不足したため経済的に苦しんでいると主張しています。この運動を受けて、議会及び保健サービスオンブズマン(PHSO)が2018年に調査を開始し5年後の今月、報告書が発表されました。報告書は、適切に通知しなかったことで影響を受けた女性に国が賠償すべきであるという判断でした。尚、一人あたりの補償金額は1,000~2,950ポンドと示唆されています。

オンブズマンの報告書は法的拘束力がなく、あくまでも政府に対する勧告です。年金庁と内閣は「報告書を検討し、いつか正式に対応する」と述べました。つまり、補償は確約しませんでした。老後の準備をする時間を25年間与えられて、時間が足りなかったという主張は情けないですね。

このワスピの運動に対する私の感想は、①年金受給開始年齢を知らなかったのは政府が悪い、補償しろという主張は自分の無知さを知らしめるもので、あまりにも恥ずかしすぎます。②たかだか1,000ポンド程度の補償金のために何年もこの運動にエネルギーを費やすのは非生産的だと思います。政府もまじめに取り合う気はなさそうです。

義父もそうでしたが、自分が貧乏で不幸なのは誰か(国)のせい、という被害者意識が強い人が多いです。こういうメンタリティだから今の状況になっていることに気が付かないのですね。年金の男女差を無くそうとした政府が逆に訴えられるなら、そもそも何をもって男女平等とするのか不明です。尚、現在は受給額も開始年齢も男女差はありません。

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