「英国人が仕事を放棄するなか、企業は海外で人材を探す」というタイトルの記事がテレグラフ(新聞)にありました。日本も働き盛り世代の人手不足と聞きましたが、英国や米国でも同様のようです。ただし、不足している原因は国によって違うようです。
英国にある企業は、英国内で望む人材を雇うことが難しいと感じているそうで、海外に目を向けて探しています。ビザをスポンサーしてもらい働く外国人の数が過去2年で2倍になりました。英国内で、900万人(!)以上の生産年齢層が雇用市場から脱落したとあります。ちなみに、英国の人口は2026年末までに7,000万人を突破する見込みです。
ここ数年の物価上昇で、企業がオファーする賃金も年6.5%と大幅に上昇していますが、それでも90万件の求人は埋まらないのだそうです。現在500万人が失業保険を受給しており、その背景は多くの人が長期的な病気を抱えていて働けないからと報告されています。
ビザスポンサーとして登録する企業の数は2021年から倍増していて、現在7万社以上です。英国政府自体は受け入れ移民の数を制限しようとしており、現在の動向はその政策と相反しています。つまり、英国政府は外国人労働者を増やすよりも、英国内にいて働いていない人(社会保障受給者)に何とか労働してもらおうとしているのです。
ビザのスポンサーとなるための基本最低給与は、今年の4月以降26,200ポンドから38,700ポンドに上昇することが決まっています。医療や介護従事者、教師は免除になります(つまり、ナース、ケアワーカー、教師はこの基準より給与が低くてもビザスポンサーの対象になれます)。
所得税免除になる人を増やすことこそが労働参加率を上げるはずですが、労働者の給与が上昇している一方、所得税の控除金額は2028年まで凍結され上昇しないので、新たに所得税を払うことになった人や、高額税率に入った人が働いても生活が豊かにならず、納税額に苦しんでいると報じられています。
尚、私の雇用主は過去も現在も一切のビザサポートをしない方針で、同じ会社で働いている外国人は働けるビザを自分で取得したうえで雇用されています。国際結婚だったり、以前の雇用主で労働ビザを出してもらいながら永住権を得たり、家族による呼び寄せなどです。ロンドンにある日系企業でも、ビザサポートを検討する会社もなくはないですが少数派で、スポンサーしたとしても恩着せがましく言われて給料も足元を見られるという話を知人から聞きました。
ブレグジットでヨーロッパ出身の人たちが労働市場にいなくなってしまった一方で、それ以外の地域からの移民や福祉対象者は増加しており、英国はジレンマを抱えています。