イギリスで企業に勤務する場合、雇用主が提供する福利厚生は様々です。当然のことですが、福利厚生が充実している企業は社員を大切にする会社と考えられるので、転職先として人気です。
イギリスにある企業が提供する福利厚生のひとつに、Salary Sacrificeという制度があります。これは給与額面から直接年金基金などへの拠出金を引かれた後の金額に所得税や国民保険料が課されるので、額面全額に対して課税されるより従業員にとっては節税になる制度です。乱暴な言い方をすると、天引きされる額を増やし、強制的に年金を積み立てるのです。英国では国民年金だけでは老後の生活費が足らないので、足りない分は個人で年金基金に積み立てていくことになります(←これを分かっていない人多すぎ)。
「犠牲」という名称ですが、犠牲と引き換えに得るものは?被雇用者にとっては現金以外の福利厚生となります。一番一般的なのは雇用主による年金基金への拠出ですが、それ以外は例えば、児童手当、有給休暇、スポーツジム会員権、通勤用自転車購入費用補助などです。
こう書いても仕組みが分かりづらいと思いますが、とてもいい図を見つけました。
どのくらい節税になるのかは、被雇用者の年収やどの程度Sacrificeするのか、企業側の拠出率などにより変わります。被雇用者にとっての利点をまとめると、①国民保険料軽減 ②所得税節税 ③(上に書いた)現金以外の福利厚生、です。
雇用主にとっての利点は、①従業員の満足度アップ ②雇用主に課される国民保険料軽減 ③社員採用時に企業の魅力アップ。双方にとっていいことずくめ、Win-Winではないですか!
一方、気を付けるべきことは、以下になります。①産休・育休手当ては控除後の金額を基準に計算されることがある ②住宅ローンなどの審査の際に、Sacrifice後の金額を年収と見なされることがある ③スキームに頻繁に出たり入ったりはできないので、柔軟性に欠ける ④他の福祉で受け取れる金額に影響があるかもしれない、です。
私の雇用主は現在この制度を導入しておらず、準備中だそうです。やるとなったら社員全員と雇用契約を結び直さないといけないので大変ですよね。先日私個人の税理士から、Salary Sacrificeが始まったら最大限利用すべき、とのアドバイスをもらいました。もちろんそのつもりです。
なお、イギリスの大企業の61~85%にこの制度があり、中小企業でも41%の会社にあるそうです。わが社、遅れているので頑張っていただきたいものです。