英国のネットゼロ政策緩和による賃貸への影響

先週、イギリス首相のリシ・スナク氏が2050年までに二酸化炭素削減目標の達成ターゲットを緩める発表をしました。彼の説明では、より現実的なアプローチをする余裕ができたから、とのこと。

例えば、英国の住居の多くはガスボイラーを暖房に利用していますが、これを2035年までにヒートポンプに移行することを義務付けています。この期限自体は変更されていませんが、今回発表されたのは、ヒートポンプへの切り替えが難しい人への免除です。古い家屋や大きな住宅が対象と思われ、ロンドン市内の多くの建物が含まれると考えられています。

ガスボイラー

スナク氏は、暖房システムをより環境にやさしい代替品に交換しようとしている世帯に7,500ポンドの補助金(50%増)を公言しています。なお、現在ヒートポンプ設置の費用は大体12,000ポンド程度なので、半額以上は助成金で賄えます。とはいえ、自腹の負担もばかにならない金額です。さらに、現在の環境では、ヒートポンプシステムにしても光熱費自体は変わらないようです。

スナク氏はまた、3年前に打ち出した、すべての大家は新規テナントには2025年から、既存テナントには2028年からEPC(エネルギー性能評価)のC以上を達成することを義務付けた政策を取り下げることを発表しました。

これが意味するところは、賃貸人はエネルギー効率が悪い住居に住んだ場合、高額の光熱費を払い続けなければならないということです。同じフラットでも、EPCがEからCに改善されれば月57ポンドも光熱費が節約できるそうです。現在、ロンドンの賃貸住宅の4割のEPCがC未満で、ロンドン市民の半数が賃貸です。つまり、負担が家主からテナントに移るということに他なりません。賃貸人は家を改装できませんから、暖房を我慢するなどして節約しようとする人もいるそうです。ただ、改装コストが削減された分、家賃を下げる大家が出てくる可能性もあり、テナントにとってはどちらとも言えないようです。

私個人としては、保守党の人気取りのための逆戻り環境政策には失望しています。

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