ブレグジット(EU離脱)を後悔する英国民が増加しています。2023年5月の世論調査で、イギリス国民の56%がEU離脱は間違いだったと考えており、31%が正しい決断だったと考えていることが分かりました。離脱に投票した人のうち離脱は間違いだったと考えている人は22%で、どちらかというと失敗だったという離脱派は37%と過去最高になっています。2021年春の時点ではBREXITを支持する人のほうが多かったのですが2022年7月に逆転し、それ以降後悔している人が増加しています。
2016年6月23日に行われた国民投票では、離脱派が51.9%で残留派の48.1%を凌ぎました。2021年春のBREXIT支持率上昇は、英国がコロナワクチンをEU諸国より早く配布したことが要因といわれますが、欧州諸国が追いつくにつれありがたみが薄れました。
キャンペーンを率先して行った、英EU離脱党の元党首ナイジェル・ファラージ氏までもが、「EU離脱は失敗した」と公言しています。彼は離脱が決まったすぐ後に、国民を離脱派に導いた各種データが間違っていたことを認めています。開いた口が塞がらないとはこのことです。離脱派は「それまでEUに支払っていた資金の多くが自国の福利厚生(国民健康サービスなど)に向けられる。」と煽りましたが、実際にはEUからの移民に依存していた国民健康サービスの看護師たちが英国を離れ、NHSは壊滅的な人手不足に陥りました。また、EU離脱によって移民が減るはずだったのに、EU圏外からの移民が急増し、政府は焦って本腰を入れて移民対策を始めるそうです。
BREXIT不支持と保守党不支持は当然ながら関連があります。当時保守党内部でも離脱派と残留派が厳しく分かれましたが、最終的に国民投票の結果を尊重し政権与党の保守党はBREXITを進めました。75%の国民が、「EU離脱は成功する可能性があったが、現政権や前政権によるEU離脱の実施で失敗した」と回答しました。
英国人はもともと自虐的で自身の不遇を人のせいにしがちな国民性ですが、EU離脱が成功だと考えている国民はわずか9%で、今からでもEUに復帰しようという世論もあります。約束された恩恵が何一つもたらされなかったことに有権者が絶望し、深刻な後悔を抱えているようです。さすがに復帰は考えられませんが、英国が払うプライス(犠牲)は残念ながら今後さらに増えるでしょう。
過去の栄光と自国の力を過信した英国は努力を止めてしまい、自国だけではどうしようもないほど国力が弱っていることにも、欧州諸国の一部から「まぁせいぜい頑張れ」と冷笑されていることにも気づかず、裸の王様です。
英国人が目下苦しむインフレーションは食料価格の高騰(5月時点で前年比15.4%増)が主要因ですが、週末に読んだ新聞には、欧州はインフレが落ち着いてきているのにイギリスだけ物価上昇がおさまらないのはBrexitのせいだと考えている消費者が大半だと書いてありました。EU残留していたとしても、EUのせいにしていた気もしますが…。