英国の半導体メーカーのアームが今週、ロンドンではなくニューヨークで上場することを発表し、英国人から少なからず失望の声が上がりました。
昨今、英国の上場企業はロンドン証券取引所(FTSE)から引き揚げ、次々と他の国の証券取引所へ移っています。欧州の金融の中心地を自負してきたロンドンは焦燥感に駆られています。当然のことながらBREXITが一番の要因ですが、それだけではないようです。専門家の意見では、流動性の低さ、厳しい規制、時価総額の低さが上場企業をロンドン証券市場から遠ざけているようです。
英国政府と金融当局はこの傾向を嘆き悲しみ、ロンドンの魅力を強化する方策に取り組み始めました。が、残念ながら、手遅れ感は否めません。国際資本市場はボーダレス化が進んでいるのに、時代に逆行しブレグジットを選んだ英国に投資家は呆れ、気持ちは離れていきました。独りよがりのポンド通貨も対米ドルで目減りし、ロンドンで上場することに妙味が無くなってしまったのです。
他にも指摘されていることとしては、上場できるくらいに企業が成長するとプライベートエクイティに目ざとく見つけられて買収されるケースが多いです。2008年の金融危機以降、ロンドンで新規上場する企業は4割も減少しているそうです。情報開示や企業統治などの規制対策費用がかかりすぎる株式公開に比べて、魅力的な即金オファーを受けることを選ぶ会社が増えたということですね。プライベートエクイティも経験を積み、唸るほどの資金力を武器にプレゼンスを強化しています。株式公開だけが資金調達の手段ではないので、成長する手段としてプライベートな株主に一任するのもアリということなのでしょう。一個人投資家としては淋しい気もしますが。
悲しいことに、英国の衰退はもはや歯止めがかからず、打つ手がないところまで来てしまったようです。