昨日、イギリス中央銀行のチーフエコノミスト、ピル氏が「労働者と企業は、上昇する物価に値上げや賃上げの要求で対処するのをやめるべきだ。我々はみんな貧乏だということを受け入れよ。」という内容のことを発言し、国民から「インフレを労働者のせいにするな!」という反発が相次ぎました。
英国では昨年末から賃上げを要求するストライキが頻発しており、鉄道職員、教師、看護師、空港職員、弁護士、救急隊員、郵便局員、医師までもがストライキを行っています。賃金の上昇が続けば、インフレも続きます。ニワトリと卵ですね。
イギリスのインフレーションは現在、アルゼンチン、トルコに次いでG20中第3位の水準で、Cost of Living Crisis(生活費の危機)が叫ばれている状況です。イギリス中央銀行の11回連続の利上げも焼け石に水で、3月の物価は前年比10.1%増となりました。その一方、賃金の上昇率は5.9%にとどまり、英国に住む人の購買力は明らかに低下しています。インフレをけん引しているのは、生活必需品のエネルギーと食料品です。
エネルギー企業が過去最高益を更新し、高騰する光熱費の支払いにあえぐ国民からバッシングを受けていますが、食品を扱うスーパーマーケットも同様に収益を大幅に拡大しています。便乗値上げをして利益をむさぼる企業に責任がある、と怒る国民の感情も理解できます。
ガーディアン紙によると、ピル氏の収入は半年前の入行から6か月で9万5千ポンド(約1,600万円)、年間では19万ポンド(3,200万円相当)だそうです。彼はロンドンの150万ポンド(2億5千万円)の価値がある家に住んでいると報じられており、一般的な庶民とはかけ離れた生活水準であることも、火に油を注ぐことになったようです。
次回の政策金利決定会合は5月11日に予定されており、少なくとも0.25%の利上げが行われることは市場で織り込み済みです。