日本には預金保険機構という認可法人があり、預金者等の保護と信用秩序の維持を主な目的としています。具体的には、預金者の預金が1金融機関あたり1,000万円まで日本政府が保証してくれるという制度です。これは1971年にアメリカの連邦預金保険公社(FDIC)をモデルに作られたようですね。
英国にも同様の預金者保護の仕組みがあります。Financial Services Compensation Scheme (FSCS)という機関が預金保険を提供しており、純粋な預金だけでなく投資も保護されています。保護される金額の上限は、一人1金融機関あたり85,000ポンド(約1,400万円)までです。口座当たりではないところに注意が必要です。FSCSは英国政府に2001年に設立されましたが、政府からは独立しており、金融機関が出資しています。
金融機関が破綻する懸念とはしばらく遠ざかっていましたが、先月のSVB銀行破綻やクレディ・スイス銀行買収の騒ぎから、再び意識されるようになりました。私の周りでも地方の金融機関から大手金融機関に預金を移したという人もいます。
普通に知られている都市銀行ならほぼ間違いなくFSCSに加入していると考えられますが、例えば小さいインターネットバンクや仮想通貨取引アカウントなどは保護されていない可能性もあります。自分の財産のある場所を確認しておいたほうが良さそうです。FSCSだけでなく、FCAという(日本でいう金融庁、政府からは独立)の管轄下にある金融機関であるかも同様に大事です。
ISAは年間2万ポンドまで非課税で貯蓄・運用できますが、毎年入金したらリターンを考慮しなくても4年ちょっとでFSCSの保証上限を超えます。私はなるべく資産は分散するようにしていて、新財務年度は別の証券会社にISA口座を開きました。他の運用資金も可能な限り1金融機関あたり85,000ポンドを超えないように管理しています。とはいえ、企業拠出型年金などは転職をしないと1つの金融機関で貯蓄していくので(金融機関は自分で選べません)、どうしても上限を超えてしまいます。これは致し方ありません。
以前からきな臭い噂は絶えませんでしたが、それでもクレディ・スイス級の金融機関が経営危機に瀕するのであれば、イギリスの金融機関にも何があってもおかしくありません。ムーディーズやスタンダード&プアーズの格付けを見ておいてもいいですが、国格付け(ソブリン)に連動しているケースもあり、クレジットネガティブなイベントが起こった後に格下げになる場合が多いので、現在高格付けだからといって将来安泰とは限りません。
結局のところ、タンス預金以外は金融機関にお金を預けて貯蓄・運用することになりますから、個人レベルで通貨、金融機関、アセットクラス、金融商品、国などに分散しておくしかリスク軽減の方法はなさそうですね。