日本ではリバースモーゲージと呼ばれるそうですが、居住中の住居を担保に資金を借りること(つまりローン)を、英国では一般的にエクイティ・リリースと言います。自宅にはそのまま住み続けることができ、債務者が死亡した後に不動産を売却し、その資金で借金を返すことになります。基本的には持ち家(不動産)を所有する55歳以上の人が利用できるシステムで、イギリスでは2011年以降10万世帯がエクイティ・リリースをしているそうです。この制度を利用する際に留意しておくべき点を書きます。
インフレーションにより生活費が上昇し、家計が圧迫されている世帯が多いです。特に年金生活になったのに生活水準を落とせずに支出が高すぎると、生活は困窮しますね。そういう人たちのために上に書いたエクイティ・リリースという選択肢はありますが、すぐに飛びつかずに熟考したほうがいいです。
子どもが独立して巣立った大きい家に住んでいる人がまずすべきことは、小さい家への住み替えです。家を売却しそれより安い不動産を購入することで現金が浮きます。住む場所というのは年代とともに変えるほうが理に適っています。不動産を売却して新しい家を買って引越すというのは莫大な気力および諸費用を要しますが、先延ばしにするとさらに億劫になります。
エクイティ・リリースを利用するにあたり、住宅ローンを完済している必要はありません。リリースされた資金は一括か、その都度少額ずつおろすか、その両方の組み合わせが可能です。
エクイティ・リリースすることが最適なのは、遺産の受取人が居ない人です。亡くなるまで自宅に住み続けることができ、資産である不動産は死後政府に税金として没収されて無くなってしまうので、自分の資産を現金化しつつ暮らすのもいいですね。子どもに遺産を残したい人は、エクイティ・リリースでだいぶ目減りしてしまうことを覚悟しましょう。
エクイティ・リリースで借りた資金にかかる金利は、固定金利か上限付き変動金利が適用されます。引き出しながら使う場合は、利用した金額に利息がかかります。引き出したお金は上限付きで返済できますが、返済を先延ばしにしていると利息が元本に加算されていき、雪だるま式に借金額が膨れ上がります。
さらに60歳以上の人が利用できるホーム・リバージョンというエクイティ・リリースがあります。これは、自分の不動産の一部を金融機関に市場価格比大幅な割引で売却し、死亡するまでそこに住むことです。亡くなった後に不動産を売却し、金融機関はその買い取った割合の代金を受け取ります。不動産価格が横ばいや下落時には得をし、上昇する時には損をする仕組みです。(続く)