ハント氏は英国財務相に着任してから、580億ポンドの財政赤字の穴を埋める政策をせっせと準備しています。正式な発表は今週木曜日に予定されていますが、今のところ分かっているのは以下の点です。基本的には、全員が増税されることになります。
①所得税控除額を2026年まで固定
英国は累進課税制度で、収入により3段階の所得税率が設定されています。物価上昇が10%なので、人々の収入も10%には満たないまでも増加していきます。その増加分を考慮せずに控除レベルを固定したら、より多くの人が次のレベルの所得税を追加で支払うことになります。
②高額納税者の収入基準の引き下げ
最高税率納税者の定義を変更して、より多くの人に最高税率で納税をしてもらう意図です。ちなみに、最高税率は45%です。クワーテング前財務相と全く反対で、高額所得者ほど納税額が高くなるように仕組みを変えていくようです。
③住民税増税
カウンシルタックスと呼ばれる住民税が増額されます。カウンシルタックスは毎年上昇していますが、この上昇率には上限があり、これを撤廃することが検討されています。
④公的歳出の削減
インフレーションによる政府支出の増加への追加財政支援はしないと発表するようです。資金が必要なら、節約でひねり出すようにとのことでした。今後数年の政府の歳出増加もごくわずかにとどめる意向です。これにより、学校や警察や地方政府は厳しい運営を迫られることになります。
⑤エネルギー会社の法人所得税を35%に増税
⑥キャピタルゲイン税
高額納税者が支払うキャピタルゲイン税の控除額を大幅に引き下げる方針だそうです。現在、所得税率に比べてキャピタルゲイン税率のほうが低いのですが、徐々に所得税率まで引き上げることが政府内で検討されています。
⑦年金控除額の固定化
現在、年金基金に入れた資金の1,073,100ポンドまでは税金が控除されています。この控除額を2027年まで固定化し、この基準を超えた場合、一度の取り崩しに55%の税金がかかることになります。徐々に引き出す場合は25%プラス所得税。国民の4分の1が貯蓄100ポンド(16,557円)未満(!)という現実を鑑みると、百万ポンド以上年金基金に積み立てている人は少数派かと思います。
⑧配当税
配当金の控除額はすでに大幅に引き下げられていますが、高額納税者は33.75%の配当税を払うことになります。
⑨相続税の控除額固定
相続した財産には325,000ポンドの控除後、40%の相続税がかかります(夫婦が受取人の場合や、不動産を相続する場合は別計算)。この控除額が今後数年固定化される見込みです。
⑩電気自動車に初課税
今まで環境改善を促進すべく、電気自動車への課税は見送られてきましたが、今般初課税となりそうです。電気自動車へ乗り換える人が多く、燃料税の税収が減少したためとのこと。2025-2026年に導入される見込みです。
これらの政策案を見て、さすが、と思いました。誰だって税金はなるべく払いたくないものですが、コロナ禍で政府があれだけお金をばらまいてインフレーションを起こしたら、どこかでツケは払わないといけないのです。減税をして支持を得ようとしたトラス氏とクワーテング氏よりも、よっぽど英国の将来のことを考えた政策だと思います。