トラス首相、崖っぷち

ここ数週間、休暇中の同僚のカバーや年末に向けた追い込みで、仕事がとにかく忙しく、私生活はそっちのけでした。ブログを書く時間もなく…。まだ激務は終わっていませんが、次々と来る案件に疲れが蓄積してメールを何度読んでも意味が把握できない状態になってしまいました。アシスタントたちが分からないことを自分で調べようという気がないので、いちいち質問してきて、何回教えてもまた聞けばいいやと覚えてくれません。時間があれば辛抱強く教えますが今回ばかりは「忙しいので、自分でやってくれる?」と言ったら「はい」と引き下がりました。

ゆっくりとニュースを追う時間もありませんでしたが、イギリスの政治は大変な局面を迎えているようです。トラス新首相が9月23日の施政方針演説で発表した減税などの政策が、金融市場で大不評で株・債券・為替のトリプル安を招いたたのは前回のブログに書きました。これから財政支出を計画的に行っていくにあたり財源を確保しないといけないのに、こともあろうか富裕層の減税および法人税引き上げ撤回という逆の方針を見せたことで、各市場は暴落し大混乱となりました。

責任を取らされたのは財務相のクワーテング氏。彼も謎の発言が多くバッシングが続くなか、IMFから政策を見直すよう前代未聞の警告を受けていたこともあり、トラス首相は自分の立場を守るために昨日の金曜日に彼を任期38日でクビにしました。後任はハント氏で、国民は彼に大いに期待しています。日本人としては日本語が流ちょうなハント氏に好感を持っています(彼の日本語は素晴らしいですよ)。先般の首相選挙でも名乗りを上げたのですが、国を引っ張っていくだけのカリスマが不足していることは否めません。今回、新財務相に任命されて早速、「先日の財政方針は間違っていた。増税が必要になるだろう」と話しているので、週明けの市場はまともな人がNo.2になってくれたことに安堵すると思われます。ハント氏の経歴を見ると、特に経済の専門家というわけでもないので、彼に期待しすぎな感はありますが。

気の毒なのはイングランド銀行(イギリスの中央銀行)で、めちゃくちゃな政府による市場の混乱を収めるために量的引き締め(QT)から量的緩和(QE)に180度の方向転換をせざるを得なくなり、私がBoE総裁ならこっぱずかしいと感じると思います。

始まったばかりのトラス政権ですが、労働党議員だけでなく、保守党議員や保守党支持の一般人からの支持も得られず、辞任すべきと考える人はChannel 4によると64%だそうです。同じ政党の仲間から支持を得られなければ、辞職は時間の問題です(今日か明日かというせっぱつまった時間軸)。労働党は当然総選挙を求めていますが、今解散総選挙をしたら労働党が圧勝することは明白なので、保守党は絶対にここで選挙に持ち込むわけにはいきません。数年前メイ元首相がこれで失敗していますから、保守党はなんとか党内の乏しい顔ぶれから次期首相を選ばなければなりません。でも正直なところ、あまり首相候補になる有能な議員がいないのが実情です。

イギリスでは日本と似たような方法で首相が決まるので、保守党員として登録していない一般人が直接投票して選ぶことができません。今後の市場動向にも影響が絶大なので、選挙権がない私も、イギリス政治の成り行きを興味深く見守っています。

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