ここ数か月、日本の複数のヘッドハンターから頻繁にメールが来るようになりました。私のような、アラフィフでとっくに戦線離脱し、海外でセミリタイアしている人間にまで応募を促すということは、中堅層の人材候補が絶望的に薄いのでしょう。「私のような者を忘れずにいてくださって恐縮ですが、現在は仕事を探しておりません」と毎回返事をしても、懲りずに「じゃ、これならどう?」と来ます。
私が有能な人材であるわけではなく、単にマッチングミスか、転職希望者や登録者が少ないのでしょう。数年前に、中高年向けと言われる日本の転職エージェントに連絡してみたら、私の希望業種や職種を入力する前に「あなたにご紹介できる仕事はありません」と登録自体をお断りされてしまいました。これが現実に近いところだと思います。
私は今のところ、仕事のために帰国する予定はありません。日本は給与水準に対して求められる仕事のクオリティが高すぎます。言い替えれば、仕事の量と責任の重さに対して給料が安すぎます。今は円安ですし、海外で稼いで日本で消費するのが理想的だと考えています。既に経済的自由を達成しているので、年収数百万円を上乗せするために、休暇もろくにとれないかもしれない環境で働く気力・体力がありません。先方だって、私生活の充実に重きを置く私のような人はお断りです。
私は就職氷河期に、就職先がない状態で卒業しました。同級生の半分ほどは卒業時にまともな仕事が無く、その後も今に至るまでフリーランスなどを転々としています。好きなことをして楽しそうではありますが、友人たちはアラフォーになっても正社員の仕事に就けず子どもを持つことを諦めたり、やっとのことで就職しても、子どもを持ったら仕事を辞めるのが当時は一般的だったので、出産を機に退職したりしています。
第2次ベビーブームで同学年の人数が多く、入学試験も就職活動もすごい倍率の競争にさらされてきて、実際に多くの人がドロップアウトせざるを得ませんでした。高校生の姪を見ていると、子ども一人ひとりが大切に育てられているなと感じます。
でも引退間近になってから「今なら仕事がありますよ、働きませんか」と言われても、キャリアが人生で一番充実する年代、つまり気力体力がピークの時期は過ぎてしまっています。手遅れなんだよ!もっと若い頃、希望する業界や組織で働きたかったんだよ!と叫びたくなります。
ヘッドハンターから来たメールは、日本にある某外資系金融機関のVPのポジションへの応募を検討して欲しいという内容でした(推定年俸3千万円だそうです)。私をどれだけ絞ってもそんな価値は出てきません。どんなエサを鼻先にぶら下げられても、熾烈な競争を勝ち抜く気力がありません。それどころか、もうスーツやストッキングやハイヒールを身に着けることすら辛く、面接の準備も億劫すぎますし、終電が無くなる時間まで残業してタクシーで帰宅なんてまっぴらです。そこまでして稼いで買いたいものもありません。
こういう話に飛びついて無駄なエネルギーを消費せずに済むのは、コツコツと資産を増やしてきたおかげであり、選択肢があって良かったとつくづく思います。