先日、50代の友人から電話をもらいました。話を聞くと、「老後の資金が全然足りなそう。仕事が無くなったらどうやって暮らして行けばいいんだろう。」と焦っていました。
その友人は平均よりも高い収入を得られる業界で数十年働いています。でも、まともに貯蓄をしてこなかったようです。「厚生年金(拠出型企業年金)は積み立てている?」と聞くと、最低額しか入れてこなかったので(額は自分で選べます)、老後当てにできるような金額は貯まっていないそうです。日本の年金もイギリスに引っ越すときに止めたのでほとんどもらえない、と。
イギリスでは一般的ですが、友人は将来に備えることに興味が無かったので、50代になって定年退職(まで勤められればいいですけれど)やリダンダンシー(人員削減のための非自発的辞職、まぁクビ)の可能性が現実味を帯びてきて、急に気が付いたのだと思います。働く意思はあります。でも需要が無くなったら?
「今から日本の国民年金を払おうと思う」と話していました。止めはしませんが、期待する金額は受給できない可能性が高く、為替リスクがあります。友人はイギリスで10年以上納税してきたので、67歳になればState Pensionという国民年金はもらえます。でもそれも35年勤務で月数百ポンドですので、持ち家がない友人は家賃を払えなくなるでしょう。
友人とは十数年来の付き合いで、当初から収入は私の方が少ない状態でしたが、私はアパートをシェアするなど爪に火を点すやり繰りをしつつ、細々と貯蓄や投資をしてきました。経済的自由を手に入れたのは、ほんの数年前のことです。友人は以前からZone 1(中心部)のオシャレなエリアの1ベッドルームフラットに住み、ロンドンでは贅沢と言える車を持っています。私も給料を全部使えばそういうライフスタイルも可能でしたが、全く保証がない生活でとてもリスクは取れませんでした。
金融市場が調整局面や弱気相場入りした現時点では、私の資産ポートフォリオでも含み損が出ているアセットももちろんありますが、長期的視点で仕込み種を買ったりナンピン買いをする機会でもあります。友人も今から将来に備えるなら、日本の国民年金もいいですが、他に目を向けるものがたくさんあります。
お金をいつ使うかという選択は個人的なものです。年寄りになってからお金があっても仕方がないので、ありがたみがある若いうちに使うという考え方も一理あります。私は将来の不安を抱えて生きるのが自分の価値観と合わなかったのと、人生の早い段階で「働かなくても暮らせる」というオプションが欲しかったので、必死に働いて貯めて増やしてきました。
義父のように全く貯蓄してこなくてもなんとかなる場合もありますが、それは生活費を援助してくれる息子(夫)がいるからです。頼れる家族がいない場合は、貯蓄や収入源が尽きたら、政府の生活保護(ベネフィット)に頼らざるを得ません。税金を納めてきたのだから国に養ってもらうのは当然の権利と考える人もいます。
友人を批判する気はありません。中年になるまで備えてこなかった人は、「人生100年時代、まだ50代」と考えて、働けるうちは働いていくしかないですね。