ここ数週間、連日のようにイギリスのメディアでは物価上昇が報道されています。ちなみに、イギリスはウィンタースポーツがあまり盛んでないので、オリンピックはほとんど話題になっていません。日本人が「山」と呼ぶものがなく、ウィンタースポーツのメインとなるスキーをするにはフランスやイタリアに行かなければいけないので、ミドルクラス以上の娯楽というのが一般的なイメージです。夫も1度もスキーもスノーボードもしたことがないそうです。
話題がそれましたが、騒がれているインフレーションが実際に家計に与える影響がタイムズ紙に載っていました。先日も書いたものも含めて、まとめます。
①社会保険料、年間380ポンド(59,000円)増加見込み。これは収入に応じて天引きされる税金の一種です。この380ポンドというのは年収40,000ポンドの人の負担額で、当然ながら収入が多い人ほど金額が大きくなります。
②ガソリン代、1リットル当たり26ペンス(41円)上昇見込み。現在、1リットル当たり約1.50ポンド(234円)程度で、すでにかなり高いです。地政学的リスクや脱炭素の傾向から、原油価格は今後上昇し続けるというのがメインの予想です。
③食料品代、年間230ポンド(36,000円)増加見込み。イギリスは外食が割高なので、自炊をする機会は今後ますます増えそうです。
④光熱費、平均年間700ポンド(109,000円)増加見込み。4月に光熱費の上限が56%引き上げられるので、契約が変動レートの場合は光熱費は上昇します。
⑤住宅ローン、年間300ポンド(47,000円)増加見込み。これは住宅ローン残高が20万ポンドで、変動金利の場合のシミュレーションです。先週イギリスの中央銀行が2回目の利上げを行い、ベース金利が0.5%になりましたが、今年中にさらに何度か利上げがあることが予想されています。
同様に、住民税、交通費、テレビ視聴料など、考えうるほぼすべての支出が増額になる見込みです。消費者マインドの冷え込みは必至で、人々は財布のひもを締めますので、経済成長は鈍化するでしょう。イギリスだけでなく、アメリカや欧州でもタイミングはずれても同じ現象が起こりそうです。
インフレで現金の価値が下がるので株式に投資しようという向きもあり、株価は今のところ下支えされています。それでも利上げが続けば企業業績に影響するので、株価は近いうちに調整局面に入りそうです。
物価上昇分収入が上がれば問題ないのですが、昇給率はインフレ率をはるかに下回るのが現実です。ベイリー英中銀総裁の年収は日本円にして驚きの約9千万円(日銀総裁の年収は3,529万円)。彼は「賃金上昇はインフレ抑制を脅かすので望ましくない」と言っていますが、それなら税金から支払われている自分の給料を返還すべきですね。