2021年の5月頃から、安定していた物価がじわじわと上昇してきており、直近データの2021年11月には2008年9月以来最高の年率5.1%となりました。
普段買い物をしていても、値段が上がったことを感じます。カフェのコーヒーも1杯3ポンド近くになりましたし、毎日食べているヨーグルトも500グラムから450グラムに小さくなりました(悲)。ガソリンスタンドに表示される価格も見るたびに上がっています。住民税も交通費も4月から3パーセント以上引き上げられることが決まっています。給料は物価が多少加味されますが、調整幅は物価上昇より少ないのが現実です。
物価が高くなっている要因は説明するまでもないですが、アメリカと同じで、コロナ対策でイギリス政府が市場に資金を供給したためです。さらに、去年の秋から物資の供給問題があり、価格を底上げしました。また、1年前に1バレル52ドルだった原油が現在80ドルになっていることから、輸送費や光熱費が上昇して価格に転嫁されてきています。
インフレーションが家計に与える影響は多方面に及びますが、光熱費の上昇が一番懸念されています。イギリスでは政府が消費者保護の目的で光熱費上限を設けていて、2021年は年間1,277ポンド(20万円)でした。この上限は2月に見直されて、4月から施行されます。エネルギーの卸売価格上昇を反映して、これが今年大幅に引き上げられると予想されています。上限まで払っていない世帯も、光熱費は約50%上昇する見込みです。
収入はほとんど上がらないのにすべての出費が増えて、Heat or Eat、つまり暖房か食料かの究極の選択をせまられる人が600万人に上るという見方もあります。クレジットカードで払うにしても、カードの支払利息も上がっていきます(イギリス中央銀行は2021年12月に利上げをしました)。
以前も書きましたが、イギリスには収入を使い果たすという人が多いです。夫の同僚が転職した時、転職先の給料日が1か月半先だ、2週間どうやって暮らそう、と途方に暮れていたそうです(驚)。これでは仕事を失ったら次の月から路頭に迷うことになります。Timesの記事によると、イギリスに住む人で貯蓄額が100ポンド(15,700円)未満の人は1,150万人だそうで、貯蓄がない人の多さに愕然とします。子どもや高齢者を含めた全人口は6,722万人です。
今のところ何とか株式市場は持ちこたえていますが、人々が出費を抑えるようになると当然企業業績も悪化しますし、インフレーションが2%前後に落ち着くまで利上げは続くでしょうから、景気後退に入る可能性が高いと思われます。