ボリス首相は今月、2023年10月から介護費用の自己負担額に新しく86,000ポンド(1,300万円)の上限を導入する法案を国会に提出しました。それを超えた分は国が払います。
さらに、国民が介護費用の支援を地方自治体から受けるには、現在は資産が23,250ポンド(351万円)以下である必要がありますが、これが100,000ポンド(1,511万円)に大幅に緩和されます。その結果、資産が10万ポンド未満の人は、年間に資産の20%以上を介護費用に使わなくて良くなるそうです。この10万ポンドの上限は、個人がケアを受ける状況や設定に関係なく普遍的に適用され、これまでに比べるとはるかに寛大な措置になります。個人資産額には下限も定められており、それを下回ると介護サービスはすべて無料で受けられることになります。その介護費を払わなくて良くなる下限が、14,250ポンド(215万円)から20,000ポンド(302万円)に引き上げられます。
この86,000ポンドの介護費用自己負担上限額ですが、介護施設にいる人の生活費は含まれません。また、上限に達した後も生活費は自己負担となります。つまり、家賃、光熱費、食費は介護に関係なくかかる費用なので除外されますが、介護される人になるべく多くの資産が残るように、生活費は一律週200ポンドになっています。
上限額にカウントされるのは、2023年10月以降に支払った介護サービス費用だけです。いくら支払ったかを管理するのは地方自治体になります。
ここで問題になるのが、介護費用捻出のために家を売らなければいけないか?ということです。今回の法案では、介護を自宅で受けている場合や配偶者が居住している家は資産上限額の計算に含まないことになっています。また、所有者が亡くなるまで売ることを先延ばしにするように申請できます。それでも実際は、資産総額が10万ポンドに満たない人は介護ケアを受けるために家を売らざるを得ないでしょう。
イギリス政府は、資産がある人もない人も介護サービスを受けられるように、それでいて資産がある人に不公平すぎないように制度を改革しようとしています。一方、裕福な人と貧しい人が同額の費用を払うのは不公平だという意見もあり、何が公平なのか判断するのは難しいです。私は、貧しい人でも必要なケアは享受できるのですし、資産の多寡で受けられるケア自体に差がつかないのですから、資産が無い場合の多少の不便は致し方ないという考えです。資産が多い人は現役時代の収入も高かったり、収入に応じた税金を払ってきたのです。
この法案が可決された場合、詳細は来年初頭に決定される予定です。