先日、イギリスでは公的年金だけでは老後の生活資金を賄いきれないという記事を書きました。実際に義父はこの状態で、私たち夫婦の経済的援助があってやっと生活が成り立っています。
日本と同じで、イギリスに住む多くの人は、公的年金に加えて厚生年金か個人年金を積み立てて2階建てにしています。義父はこの個人年金の積み立てをしてこなかったので、引退後に困窮しているのです。
この私的年金ですが、受け取り方が2種類あります。Drawdown(引き出し)と、Annuity(終身年金)です。昨日のTimesの記事にどちらが得かという比較があり、結論としては平均的な株式55%のポートフォリオの場合、67歳まではDrawdownで、その後はAnnuityにするのが一番経済的に得ということでした。
何歳ぐらいでどういう生活がしたいかというのは人によって違いますし、財産を残したいか全部使い切りたいかでも違うので、一般化するのは難しいですが、あえての結論です。
一定額を死亡するまで受け取れるAnnuityは、概念的には生命保険のようなもので、一番の魅力は「安心」です。もちろん、途中で支給額が減額されることがあり得ないわけではありませんが、全くもらえなくなることはないでしょう。
Drawdownは、年金基金にある資産を自分で運用し続ける代わりに、投資に失敗したり使いすぎたりすると資産が枯渇してしまう可能性があります。そのため、投資の知識がない人は自分でポートフォリオを管理する自信がなく、そして年金受給年齢を迎えてから投資の勉強をしたくもないということで、年金管理会社にお任せ、というオプションを好むそうです。
上記のようにAnnuityを選ぶ人が多いのは、人は投資で増やすこと以上に損をすることを恐れるからです。Drawdownの平均運用コストはAnnuityの約半分だそうで、簡単に言うと、Drawdownの方がもらえる金額が多い可能性が高いということです。
ある時点まで来たらAnnuityに切り替えたほうが得というのは、投資収益や複利効果を享受する残り年数が少なくなるからです。また、残り年数が少なくなったと見なされると、年金会社が毎年の支払いを増やします。同じ年金基金残高でも、取り崩し開始年齢を60歳からにするのと70歳からにするのでは、後者のほうが金額が高くなると聞いたことはあると思います。
一方、取り崩し形式のDrawdownの場合、引き出すごとに残りの基金が少なくなりますから、投資収益も小さくなっていきます。
投資の勉強に後ろ向きな人が多いのは、投資が趣味の私にとっては驚きですが、理解できなくはないです。私は認知症になるまでは自分で年金ポートフォリオを管理すべく、失敗もしながら経験を積んで、なるべく長くDrawdownでいこうと思います。