私が会社勤めを続ける理由1…イギリスの企業年金

私が文句を言いつつも長年イギリスで会社勤めを続けている理由は、ズバリ(死語?)、企業年金目当てです。

イギリスの年金制度はState Pension(日本でいうと国民年金)という国が管理する年金と、企業年金(日本の厚生年金)があり、会社勤めをしていた人は両方受給することになります。フリーランスの人は、個人で年金積立をしている人もいるようです(ISAと呼び、日本のつみたてNISAのようなもの)。

私はアメリカで働いていた時に拠出年金システムに加入していましたが、帰国の際に解約し、約40%も税金がかかりました(涙)。その後の米国株の成長ぶりを見ると、解約しなければそれなりの資産になったはずですが、積み立てた資金は帰国後の生活立ち上げに役立ちました。投資の世界にタラレバは無意味ですので、気持ちを切り替えていきましょう。その後日本で働き、厚生年金を払いましたが、数年だけなので受給予定額は数千円です。

つまり、30代半ばのイギリス移住時点で、私が将来受給できそうな年金はほぼゼロでした。詰んでる…。

年金システム自体が信用できるかは議論の余地があるものの、さすがにヤバい状況であることに気づき、10年ほど前から勤め先の企業年金に積み立てています。

尚、日本の退職金制度のようなものはイギリスにはありません。

現行のイギリス年金制度では、1953年以降に生まれた人のState Pensionの受給開始年齢は67歳です。イギリスで最低10年間National Insurance(給与から天引き)を納めた人に受給資格があります。満額で週£175.20(月700ポンド、93,000円程度)ですが、今後減額される可能性があります。物価が高いイギリスの生活費をまかなうには、心もとない金額です。ましてや、10数年しか働いていない私はその数分の1で、老後の当てにできるものではありません。

一般企業の社員は半ば強制的に企業年金制度に加入させられます。被雇用者が年金プログラムに加入した場合、雇用者は従業員の給与の数%を拠出し、社員も一定比率拠出し、一緒に年金基金を貯めていきます。この何%拠出するかは雇用者の裁量で、イギリスでは最低3%が企業に義務付けられ、一般的には6%~12%程度のようです。拠出した資金は、被雇用者自身が選んだファンドで運用されます。ファンドの選択肢はたくさんありますが、多くの人はあまり考えず、「低リスク安全志向でお願いします」といったざっくりとしたリクエストを最初にして、放置しているようです。転職した場合は、新しい勤務先が提携するファンド会社に今までの年金基金を移してもいいですし、そのまま置いておいても問題ありません(住所変更の連絡を忘れずに!)。

私はこの雇用者拠出率を重視し、転職の際の判断要因の一つにしています。例えば給与が4万ポンドで雇用者の拠出率が10%なら、実質£44,000になるわけです。長い目で見ると、無視できないインパクトです。私は初年度は最低限の金額しか積み立てていませんでした。1年後、年金管理会社からレポートが届き、「あなたが同じ金額を67歳まで積み立てたとして、受給できる金額は年間7,500ポンドです」と書いてあり、愕然としました。足りない…。

人よりスタートが遅いのですから、その分頑張って貯めなければいけません。老後に必要な資金は普通の生活レベルで、上記State Pension満額受給前提で、退職時に企業年金基金が夫婦で26万ポンド(3,500万円ちょっと)とされており、これを1人で貯めることを目標にしました。給与からの天引き率を上げ、ファンドを厳選し、定期的にパフォーマンスをチェックし必要なら入れ替え、あと数年で達成できそうなところまで積みあがってきました。税前給与から引かれるので、自分の拠出金を増やすことは節税になります。企業年金に貯めた資金は55歳からアクセスでき、住宅購入などに使うことができますが、年収に加算されて所得税がかかりますのでご注意ください。

もちろん、配偶者やパートナーと一緒に貯めれば格段に楽になります。夫は夫で貯めているようですが、それをあてにせず自分で貯めたいところです。人生何が起こるか分かりませんから、退職前に夫婦関係が破綻するリスクも考慮した老後設計です。

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