数日前に報道されていたのですが、コロナウィルス対策で政府が資金を使いすぎたために、その財源の埋め合わせに増税を検討しているとありました。イギリスだけでなく、世界各国似たような状況だと思います。
保守党の公約に反する増税は、まぁある程度予想は付く対応です。パンデミック中にNHS(国民健康サービス)への財政的サポートは激増していますので。問題は、①誰が負担するか、②どの程度負担が増えるか、です。コロナ以外の治療や手術が大幅に遅れており、手当てを受けたくて待っている人が545万人もいるのです。
税金といってもいろいろあり、主なもので所得税、付加価値税、国民健康保険税などです。このうち国民健康保険税が引き上げられることが議論されています。これを支払っているのは、2,500万人の労働人口です。税率は年収5万ポンドまでは12%で、それ以上は2%です。
高齢者のケア費用を若い世代が負担することに政府内から批判もあります。日本もそうですが、医療システムの利用者より、納税者が多く負担しています。高齢者が長生きをするようになったので、その費用を政府が捻出しなければならないのです。国民健康保険で集められた資金は、高齢者や障碍者の洗濯、食事、被服費、薬代に使われます。
保健相のJavid氏は健康保険税を2%引き上げる意見だそうですが、今日現在の予想では、ジョンソン首相は雇用者と被雇用者に1%ずつ負担を増やす案を出すと予想されています。この増税により100億ポンドの税収が見込まれます。なお、医療システムの主な利用者である年金生活者の負担は一切増えません。
実は私は知らなかったのですが、税金は以下のグラフのように徴収されています。年収が5万ポンド(750万円)を超えると、所得税が増えて健康保険税は減ります。ちなみに試算では、所得税と健康保険税どちらが1%増税になっても、納税者個人への影響は似たり寄ったりみたいです。年収5万ポンドの人の場合は、年間6万円相当前後給与から天引きされることになります。
これまで既に、カウンシルタックス(住民税)はそれぞれの地方自治体で5%近く上がっており、インフレーションも相まって、一般国民の負担は増加するばかりです。年金受給者の義父は「何もかも高くなった」と愚痴をこぼしています。先日の記事で書きましたが、イギリスは貯金や資産がない人でも国が何とかしてくれるので、国民の無駄遣いが収まらず、国の財政を圧迫しています。つつましく暮らして貯金をしてきた人は高額のケア費用を自己負担しなければならないのに、お金を使い切った人は国が払ってくれるシステムです。セイフティネット(社会保障)がきちんとしているというのは、いざ自分が障碍者になった時などにはありがたいのでしょうけれど、正直なところ一生懸命に働くのがばかばかしくなることもあります。国民全体の富を不公平でないように配分するのは古今東西難しい課題ですね。
<追記>9月7日に、2022年4月から健康保険税が1.25%増加になることが発表されました。配当金収入への課税も1.25%上乗せされます。また、2023年10月から、資産が20,000ポンド未満の人はケア費用を国が全額負担し、20,000~100,000ポンドの人は部分的に国が負担します。個人で負担する費用は資産額に関わらず86,000ポンド(1,300万円)が上限となります。所得税を増税しなかったのは、個人だけでなく雇用者も負担すべきだからだそうです。