イギリスの新税務年度は4月6日から始まりますが、来期はイギリスで働いている人にとって過去30年で最も税負担が多い年になります。住民税、水道料金、電気ガス代、携帯使用料、ブロードバンド代が4月1日から値上げになりました。実質の所得税も過去30年で最高です。家計は1990年代初頭以来のひっ迫状態という経済学者もいます。
具体的には、所得税は基本税率を払っている人は年間500ポンド、高い税率の人は1,000ポンド追加で課されます。携帯電話とブロードバンド料金は平均14%上昇、水道代は7.5%、住民税は平均的価値の不動産で年間99ポンド上がりました。
以前も書きましたが所得税増加は、控除額が2028年まで据え置きされることによるものです。インフレ分収入も上がるので、より多くの人が高額税率(40%)に組み込まれます。政府の税収は280億ポンド増加します。
国民の生活が苦しいのに、税金を引き上げざるを得ない理由の一つは…。
パンデミックの際に英国政府は気前のいい援助策を次々と実施しました。働かなくても給料がもらえるファーロースキームを代表とする政策です。多くの人が救われた一方、制度を悪用する人もあとを絶たず、パンデミック以降に政府が詐欺に払い込んだ資金はなんと210億ポンド(3兆4,000億円!)にのぼりました。そのうちコロナ救済政策の詐欺被害は70億ポンドだそうです。つまり、自称事業主などが従業員数を水増しするなどして政府から資金援助を受けましたが、政府がだまし取られた納税者の資金が回収される可能性は非常に低いそうです。さらには、公的機関は詐欺の被害額を認識できておらず、2022年になっても払い続けていたといわれます。この詐欺被害回収のために雇われた税務専門家は1,200人です。
納税者の血税を210億ポンドも失ったことだけでなく、これを許しておけば、英国政府をだますのは簡単だと国民が考えてしまいます。もともと低かった公的サービスへの信頼性はゼロどころかマイナスです。何とかして少しでも多く取り返して欲しいと思います。