財政赤字に悩む英国は、税収をどう富裕層からひねり出すかとあらゆる選択肢を検討中です。毎年秋に国家予算の発表があるのですが、今年も増税自体は既定路線で、焦点はどの税金が引き上げられるか、ということです。
いろいろな憶測が報道されていますが、今のところ一番可能性が高そうなのは相続税の改定です。政権を率いる労働党は経済的弱者の見方。保守党政権時代に拡大した格差を縮めるべく富の再配分の方法を模索しています。
昨日新しく報道されたのは、住宅の売買時にかかる税金が見直されているということです。現在の制度では、住宅を購入するときに購入者が住宅の価格から算出した印紙税を払います(初回購入者割引あり)。居住者がその住宅の価値に比例する住民税を地方自治体に納めます。現在報道されている代替案は、50万ポンド(約1億円)以上の住宅を売却するときに家の価格に比例する不動産税を導入するというものらしいです。
一旦話がそれますが、英国政府は国民に大反発されないように、発表前にマスコミにそれとなくリークしておき、世論を探ります。
住民税改革は重要で複雑なので、任期5年では実現しないと思われています。住民税が問題視されている理由は、住宅価値の査定が行われたのは1990年代初頭で、その後の住宅価格高騰により格差が拡大し不公平が指摘されています。経済学者たちも印紙税は時代遅れだと批判しています。
今回検討されている不動産税が施行されると、現在住宅購入の60%に課税されている印紙税に対し、約20%の住宅購入にのみ課税されることになります。一番の違いは、印紙税は購入者が払うものに対して、新しい税金は売却者が払うもののようです。これはフェアだと思います。

イギリスの住宅市場は売買が活発化しているそうで、通常取引が少ない夏も売買件数が増加しているようです。今月の利下げが後押しして今のところ買い手市場ですが、今年の秋はコロナ禍以来の活況になると見込まれています。