今に始まったことではないですが、英国のインフラストラクチャーは日本から来た人が見れば、驚愕するレベルのお粗末さです。基本的なことが整備されておらず、国民の日々の生活に支障をきたしています。
具体的には、道路、鉄道、上下水道、インターネット、バス路線、電気、ガス、ごみ処理などが、他の先進国に比べてため息が出るほど遅れています。英国政府がこれらの公共事業に投資してこなかったことが原因と言われています。そして今般問題になっているのは、上下水道の管理会社Thames Water社で、半年ほど前から同社が倒産の危機に瀕していると報道されています。
テムズ・ウォーターが供給する地域は主に、ロンドン一帯、サリー州、グロスターシャー州、ウィルトシャー州、ケント州などです。1989年に英国政府による公共事業の私企業化政策の一環として設立されました。会社名のとおり、水の供給源はテムズ河です。英国に住む人の4分の1に飲料水を供給しています。
テムズ・ウォーターの設備は老朽化しており、過去何度も河川の汚染に対して罰金を支払ってきました。現在の株主は複数の年金基金や海外の投資会社が9割を占めており、莫大な配当金をねん出するために巨額の借り入れをしてきたことが批判されています。借入金は何と140億ポンドに上り、倒産を回避するために株主が昨年7億5000万ポンドの資本注入をしましたが焼け石に水で、2030年までに250億ポンドの追加資金が必要と言われています。が、現株主たちは追加資本注入を拒否しています。
テムズ・ウォーターでは企業利益が最優先され、人々が安心して水を利用できる状況が脅かされ、文字通り汚染されていて呆れてしまいます。前株主(オーストラリアのマッカリー金融グループ)が配当金を絞り出して倒産に追い込んでおきながら、公的資金注入で立て直すのは本当に腹が立ちます。財務担当者の能力不足もあると思います。
驚くべきことに、大雨などにより処理能力を超えてしまった場合は、下水を未処理のまま河川に垂れ流すことが頻繁にあるのです(信じられます?)。その結果、テムズ河の大腸菌はとんでもない水準になっているそうで、水道事業の再国有化を望む声が高まっています。そうなると、血税が使われることになるので悩ましいところです。清らかな日本の河川を見慣れた私は、どぶ川のようなテムズ河を汚いな~と思いながら見ています。